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『ガンダム』アンテナちゃうの? シャアザクみたいな自衛隊機の「角」の意外な用途!

アニメ『機動戦士ガンダム』において、「角付き」とよばれる「ザク」はいわゆる隊長機であり、つまりそれだけ技量などに優れ、畏怖や恐怖の対象でもあります。では自衛隊の「角付き」機はというと…そもそもなんの角なのでしょう?

自衛隊機に見る「角」というと…?

「角付き」と恐れられた隊長機仕様のS型。「RG 1/144 MS-06S シャア専用ザク」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
「角付き」と恐れられた隊長機仕様のS型。「RG 1/144 MS-06S シャア専用ザク」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』において、ジオン公国軍の主力モビルスーツ(MS)として登場する「ザクII」は、その存在感ゆえに、シリーズを語るうえで決して避けて通ることのできない機体です。

 なかでも「角付き」、すなわち頭部に角状の「マルチブレード・アンテナ」を備えた「隊長機仕様」は、「シャア・アズナブル」および「シャア専用ザク」の登場と相まって、強者のアイコンとして深く視聴者の記憶に刻まれたことでしょう。

 興味深いのは、この角状アンテナが単なる視覚的誇張に留まらず、機能的意味を有しているという設定です。すなわち、これはブレードアンテナとして通信能力の強化を目的とした装備であり、部隊運用における情報共有や戦術的指揮の円滑化を担う、まさに「指揮官機」に相応しい機能性を体現する構造なのです。

 つまり、戦国武将が兜の前立てに象徴的意匠を掲げたように、ザクの角は威圧と畏敬を同時に喚起する戦場の「顔」として成立しているといえるでしょう。そしてそれは、MSにおける階級表象の美学的スタンダードとして定着するに至っています。

 この「角付き」という概念は、現実の自衛隊装備にも意外なかたちで見出すことができます。自衛隊のヘリコプターが赤く塗装され、三倍の速度で飛行するというお話ではありません。そこではなく、陸上自衛隊が運用するUH-1、UH-2、AH-1、さらにはUH-60といった各種ヘリコプターに、鋭角的に前方へ突き出た、まるでザクの「角」のような印象を醸し出すものが見られることです。

 これはワイヤーカッター、正式には「ワイヤー・ストライク・プロテクション・システム」と呼ばれています。もちろん見た目のために搭載されているものではなく、極めて実用的かつ致命的事故を防ぐための装置です。

 ヘリコプターは任務の性質上、しばしば低空を飛行します。その際、山間部や市街地に張り巡らされた送電線や通信線は、操縦者にとって「見えざる脅威」と化します。これらのケーブル類と接触すれば、回転翼への巻き込みを通じて機体損失や乗員の死傷という深刻な結果をもたらすおそれがあります。

 ワイヤーカッターはこのリスクを最小限に抑えるため、機体前部から斜め上方に突き出す形で装着され、飛行中に電線と接触した際にはそれを物理的に切断し、被害の拡大を防ぐ役割を果たすのです。

 無論、これらの装備が部隊指揮官を示すような「階級表象」の役割を担っているわけではなく、あくまで全機に標準装備される安全機構にすぎません。しかしながら、軍事装備とガンダム世界に共通する美学に親しんだ者にとっては、この視覚的共通点が感覚的な親和を呼び起こすのもまた事実であり、実際、一部のミリタリーファンのあいだでは、ワイヤーカッターを装着したヘリを冗談交じりに「隊長機」と呼ぶことも珍しくありません。

 モビルスーツのブレードアンテナと実用兵器のワイヤーカッター、いずれも単に構造物ではなく、機能と合理性が追及される兵器という無骨な存在の中に、一種の美意識を生じさせているという点では共通しているといえるのではないでしょうか。

(関賢太郎)

【画像】えっ、ホントに角ついてる…! こちらが陸上自衛隊の「角付き機」です

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関賢太郎

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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