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『ボトムズ』最終回でキリコが“衝撃の選択”をしたのはナゼ? ミリタリー色に隠された本当の物語とは

放送から40年以上が経ったいまでも根強い人気を誇る『装甲騎兵ボトムズ』。戦争をテーマにしたハードなロボットアニメとして知られる一方で、ミリタリー色の強い外装の奥に隠されていたのは、意外にもロマンチックで美しい物語だったのです。

本当の物語を知れば納得の最終回?

主人公のキリコと、座り込むスコープドッグが描かれる、TVアニメ『装甲騎兵ボトムズ』キービジュアル  (C)サンライズ
主人公のキリコと、座り込むスコープドッグが描かれる、TVアニメ『装甲騎兵ボトムズ』キービジュアル  (C)サンライズ

 どんな時代、どんな場所でも「戦争」が作り出すのは哀しいドラマ……。

 こんな表現をすると、もしかするとファンの方には叱られてしまうかもしれませんが、放送から40年以上経たいまでも、根強い人気を保っている『装甲騎兵ボトムズ』を、物語からの視点から語ると、こうなってしまうのではないでしょうか。

 大雑把な表現ですが、もはや半世紀前に作られたさまざまなTVアニメーション作品、特に「ロボットもの」と呼ばれる、玩具メーカー等をスポンサーにして展開していたアニメは「戦い」が主体のものになりがちでした。

 その代表が、皆さんご存じの『機動戦士ガンダム』から続くガンダムシリーズですし、同じ日本サンライズ(現:バンダイナムコフィルムワークス)作品の『装甲騎兵ボトムズ』もそうです。

 特に『ボトムズ』は、企画段階から「プラモデル」という、元々ミリタリー色が強い商品を意識して作られている作品だけに、通常のアニメ視聴者より年齢層の高いプラモデルユーザーも視聴者の一角に取り込みたいというもくろみがあったのも確かです。

 そんな前提はありながらも、TVアニメーションと言えども「意味のある作品」を創ろうとするのは、クリエイターの「さが」です。

 特に、この時代のクリエイターたちのリーダーであった監督やシリーズ構成を担うベテランたちは、そのほとんどが第二次世界大戦の戦中・戦後時代を肌で知っている世代です。「戦争はあってはならないもの」「戦争は悲劇しか生まない」。こうした信念をしっかりと持った彼らは、架空の世界であっても「戦争賛美」などは絶対にしない人々です。

 例えミリタリー的な要素がヒットの鍵になった『ボトムズ』でも同様。主人公であるキリコは、いわば戦争というものが生み出した犠牲者ですし、ヒロインのフィアナも戦うために作り出された悲劇の女性。このふたりがともに幸せに生きていくには、あの世界と時代から去るしかない。その方法が、コールドスリープで宇宙に放たれるというラストの場面になります。

『ボトムズ』の物語や設定などを管理した、当時の文芸設定制作に話を聞くと、あの作品は、監督から、ものすごく大雑把な全体像が提示されただけで、前の脚本家が書いたシナリオに沿って、次はどうするかを脚本家同士が考えてつなげていくという「リレー方式」を取っていたのだそうです。

 それが可能だったのも、脚本家陣が、全員「超」が着くようなベテランだったから。

 みな、シリーズ構成や原作をこなせる力のある方々ですから、意識的かどうかは分かりませんが、まるでゲームのように「さあ、私はこうしたが、あなたはこれをどうする?」と引き継いでいった……そんなイメージとでも言いましょうか。なんとも贅沢な作り方をしたものです。

『ボトムズ』は「リアルロボットもの」とか「ミリタリーもの」とか言われがちですが、それはあくまでも画面作り上のいわば外装だったとも言えるでしょう。

 なぜなら、物語そのものは「SFファンタジー」なのです。

 文芸設定制作曰く、

「七夕の物語です。おり姫とひこ星の話。だから、キリコの誕生日は7月7日なんですよ」

 星の世界の悲恋の物語。

「ボトムズは子供には難しかった」と言う人もいるそうですが、たまたま巡り会った大好きな人を守り続けていった末に、戦争のない平和な世界でともに生きて行きたいと願ったキリコという青年の「一人称ドラマ」。それに帰結するのがTVシリーズの『ボトムズ』なのです。

 ひこ星キリコ、おり姫フィアナ……。

 そう言われると、あの機械油まみれの『ボトムズ』が、とてもファンタジックで美しい、星々の中に消えて行くラストがよく似合う「ロマンチックな哀しい純愛物語」だったと気がつくかもしれません。

 最後に文芸設定制作から一言。

「ただ、アストラギウス銀河に七夕があるかどうかは知りませんよ」

 とのことです。

(風間洋(河原よしえ))

【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
2017年から、認定NPO法人・アニメ、特撮アーカイブ機構『ATAC』研究員として、アニメーションのアーカイブ活動にも参加中。

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