『ばけばけ』高石あかりの「切り替え」「感情の動き」がエグイ怪演が観られる映画 「何個引き出しあんの」
『ばけばけ』で話題の高石あかりさんは、22歳の若さでこれまでさまざまな作品でみごとな演技を見せてきました。そのなかでも彼女の「怪演」が話題の映画3作品を紹介しましょう。
中年の殺し屋が憑依した役も

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』の主演で話題の高石あかりさんは、2021年に第1作が公開された青春アクション映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで知名度を上げ、その後、アニメ映画『きみの色』や『映画たべっ子どうぶつ』では声の演技はもちろん透き通った歌声も披露するなど、多彩な活躍を見せています。
幼い頃から女優を目指していた彼女は、「朝ドラのヒロインになるべくしてなった」と言えるほどの大躍進を続けて来ました。『ばけばけ』のチーフ演出である村橋直樹さんは、ドラマガイドブックで髙石さんの「5秒前に地面がひっくり返るほど笑っていたと思ったら、5秒後にはひっくり返って泣いているような目まぐるしく感情が動いていく」ような演技を絶賛しています。そんな彼女がこれまで助演、主演で、忘れがたい「怪演」を見せた映画を3作品振り返ります。
●『セフレの品格(プライド) 決意』
湊よりこさん原作の同名レディースコミックを2部作で映画化した『セフレの品格(プライド)』(R15+指定)では、高石さんは後編『決意』から登場する17歳の少女「山田咲」を演じました。咲は、セックスフレンドの大人たちの関係に割り込んでいく立場です。
彼女は表向きは朗らかに会話をしているようで、ボソッと「ふざけんな」とつぶやくような不良性を見せ、シングルマザーの主人公「森村抄子(演:行平あい佳)」へ、決して許されないある犯罪行為をしてしまいます。
さらに、自分を助けてくれて好きになってしまった産婦人科医「北田一樹(演:青柳翔)」にそのことを悟られ、「だってあなたのことが好きなんだもん」「だから抄子さんのことが邪魔なの」などと開き直って目を見開き、「ああ、失敗しちゃった」と笑うその姿は、「自暴自棄」「痛々しい」といった言葉では表現できないほどの悲しみがありました。
その後の咲の反省と後悔、クライマックスで成長したその姿も含めて、現状での高石あかりさんのベストアクトだと断言します。
なお、『セフレの品格』は未公開カットも加えて全10話に再編成した、ドラマ版も配信中です。さらに続編映画2部作『慟哭』『終恋』の公開も発表されており、ポスターには高石さんの出演も明記されています。
●『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』
2024年公開の『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』は、憧れの作家を見つけるために新聞部に潜入した女子高生「所結衣(演:藤吉夏鈴)」が「見習い記者」として活動する青春ミステリーです。彼女がタッグを組むのは、高石さん演じる部長「杉原かさね」で、彼女の「この仕事で重要なのは体力と記憶力、そして嗅覚だよ」「手に入れた事実には、公正な視点でメスを入れていく」といった助言は、頼れる先輩記者そのものに思えます。
ただ、その取材スタイルは「証拠をつかむまで、ターゲットに徹底的に食らいつき離さない」危ういもので、その「人心掌握術」ふくめ、結衣から「記者というよりも詐欺師に近い」と評されるほどでした。強引に相手を丸め込んだ後、見えないように「ベッ」と舌を出してイタズラっぽく笑う、高石さんの表情のインパクトも絶大です。
ちなみに、本作の原案は日本大学藝術学部に在籍中だった高校生が、当時世間を騒がせていた「日大アメフト部悪質タックル問題」から着想を得て作成した企画書でした。若者たちが劇中で学園の理事長(演:髙嶋政宏)からの不尽な圧力を受けながらも作戦を立てて逆転を目指す姿に、勇気がもらえる作品です。
●『ゴーストキラー』
2025年公開の『ゴーストキラー』は、『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾監督が脚本を手がけ、アクション監督の園村健介さんがメガホンを取った映画です。高石さん演じる女子大生の「松岡ふみか」が、成仏できずにいた殺し屋「工藤(演:三元雅芸)」の幽霊にとり憑かれて戦う羽目になるという物語で、ふたりのやり取りはいい意味でコントのようでした。そして、本作の高石さんの怪演とアクションは、もはや達人の域に達しています。
髙石さんの「理不尽な事態に巻き込まれてグチをもらす女子大生」と「攻撃的な殺し屋の中年男性」を即座に切り替える演技は、もはやそれだけで大きな見どころです。敵との戦闘になり、目を見開いて口を震わせ「ヤバイいヤバい」とテンパったかと思えば、殺し屋にスイッチして「うるさい、舌噛むぞ」とドスの効いた声を出す姿は彼女の真骨頂と言えます。
本作は他の人からは見えない幽霊との掛け合いが楽しめる正統派な「バディもの」でもあり、ハリウッド映画『ゴースト/ニューヨークの幻』『ミッドナイト・ラン』などを連想する、洋画ファンにもおすすめの1本です。
※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」が正式表記
(ヒナタカ)

