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「学問のある女なら」 ばけばけ・イライザの『怪談』への反応は小泉八雲の発言と関係が? 没年に出された「読みやすい」本

『ばけばけ』ではトキの多大な協力によって、ついにヘブンが『怪談』を完成させました。

学があったら生まれなかった本?

『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)

 放送中の連続テレビ小説『ばけばけ』24週119話では、主人公「雨清水トキ(演:高石あかり)」が、夫「雨清水八雲(レフカダ・ヘブン/演:トミー・バストウ)」に、「学のない私でも読める本」を書いてほしいとお願いしました。そして120話では、トキが東京のさまざまな市井の人びとから怪談を聞き、さまざまな書物をあさって、「むじな」「ろくろ首」「雪女」「耳なし芳一」などの話をヘブンに語り、ついにモデル・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の代表作『怪談』が完成します。

 1904年9月26日に亡くなったハーンは、その5か月前の4月2日に『怪談』を発表しました。トキのモデルである妻の小泉セツが、自分でも読める本を書いてほしいと頼んだというような記録はありませんが、さまざまな怪談・説話の並んだ『怪談』はハーンの著作のなかでも、誰でも読みやすい部類の書物なのはたしかです。セツも古書店でさまざまな話を集め、夫に語り聞かせてともに著書を作り上げていきました。

 長男・小泉一雄は、著書『父「八雲」を憶う』(1931年)のなかで、父が亡くなる1か月前の頃に英語教育の一環として原版の『怪談』を読まされた際のことを書いています。どの章も割とすらすらと読むことができ訳も間違えなかったため、一雄はいつものように叱られなかったことを振り返っていました。ハーンが「この本あなた真実(ほんとう)好きですか?」と尋ねると、当時10歳の一雄は「容易しくて面白いです」と答え、ハーンは苦笑したそうです。

 また、『父「八雲」を憶う』では、自分にもっと学があったらと卑下する発言をしたセツに、ハーンが並んだ自分の著作を見せて「斯(こう)、誰のお陰で生まれましたの本ですか? 学問のある女ならば幽霊の話、お化の話、前世の話、皆馬鹿らしのものといって嘲笑うでしょう」と言ったことも語られています。

 養家・稲垣家が背負った借金のせいで11歳で小学校を辞めたセツは、最後まで英語を話せず、動詞や形容詞の活用を省き、日本語と英単語を交えた独自の「ヘルンさん言葉」で夫に怪談を語って聞かせました。彼女語り部としての苦労は、後の回想録『思ひ出の記』(1914年)でよく分かります。

「怪談は大層好きでありまして、『怪談の書物は私の宝です』と云っていました。私は古本屋をそれからそれへと大分探しました」

「私が昔話をヘルンに致します時には、いつも始めにその話の筋を大体申します。面白いとなると、その筋を書いて置きます。それから委しく話せと申します。それから幾度となく話させます。私が本を見ながら話しますと『本を見る、いけません。ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考でなければ、いけません』と申します故、自分の物にしてしまっていなければなりませんから、夢にまで見るようになって参りました」

 上記のような形で語られたセツの話を、ハーンが耳で聞いて自分の感性を加え、出来上がった『怪談』は唯一無二の再話文学の名作となり、100年以上読み継がれてきました。

 120話でアメリカにいるヘブンの元同僚「イライザ・ベルズランド(演:シャーロット・ケイト・フォックス)」が『怪談』の原稿を受け取り、「まさか…。なぜ…なぜ最後にこんな幼稚な…なぜ!」と怒りを見せたのは、前述のハーンの「学問のある女ならば~」という発言を踏まえた展開なのかもしれません。インテリで優秀なジャーナリストのイライザも、今後は『怪談』を名作として認めてくれるのでしょうか。

※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」

参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『父「八雲」を憶う』(千歳出版)

(マグミクス編集部)

【画像】え、「上手すぎるだろ」「怖いけどなんか可愛い」 コチラが絵も得意な小泉八雲本人がイラストで描いた「ろくろ首」です

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