『機動戦士ガンダム』嫌われ者「マ・クベ」の意外な実像。「部下思いの上司」の側面も?
その悪役ぶりで嫌いな人が多い、『機動戦士ガンダム』のキャラクター、マ・クベ。しかし、その行動をつぶさに観察すると、意外な事実が見えてきます。隠されたマ・クベの実像を探ってみました。
マ・クベは悪役? 理想的な上司?

今から41年前の1979年12月15日は、『機動戦士ガンダム』第37話「テキサスの攻防」が放映された日です。このエピソードで壮絶な最期を遂げたマ・クベは、その策謀家としての一面から、あまり人気はありません。マ・クベの初登場は第16話「セイラ出撃」。神経質そうなデザインと、担当声優の塩沢兼人さんのキザなセリフ回しで、一見して「嫌な奴」というイメージを視聴者に印象付けます。
そのイメージ通り、それからも陰険な策略家という面が強調されていきます。ランバ・ラルへの補給を握りつぶす、エルラン中将に裏切りをそそのかす、南極条約で禁止されている核兵器を使うなど、悪役らしい悪役という印象です。
『機動戦士ガンダム』では、それまでのロボットアニメと違って「勧善懲悪」に偏らず、敵のジオン公国にも彼らなりの正義があるというスタンスで作られていました。マ・クベ登場以前に戦ったシャアにしろ、ランバ・ラルにしろ、敵ではありますが悪人というイメージはありません。
そういう意味でマ・クベは、作中で初めて登場した「悪役」だったと言えるのかもしれません。
しかし、本当にただの悪役だったのでしょうか? 疑問に感じる場面があります。第18話「灼熱のアッザム・リーダー」で、機密保持のために基地を爆破するように命じたキシリアに、マ・クベは兵士がまだいると自爆を躊躇します。
第36話「恐怖!機動ビグ・ザム」では、ソロモンを脱出した兵士救出のため、キシリアから預かったグワジンからチベに乗り換えました。これらの行動を見ると、意外に悪人ではないのかもしれないという印象を受けます。
戦略を張り巡らせるということは、最低限の損失で最大限の効果を得るということ。そう考えると、マ・クベは部下思いのいい上司なのかもしれません。
前述のキシリアとの会話も、上役に逆らえない哀れな中間管理職だと考えると、むしろ弁護の余地のある構図かもしれません。
また、一度はソロモンからの脱出者を見捨てようとした件も、同行のバロム大佐にいさめられると、自分の発言を撤回してすぐ救助を許可する柔軟さを見せました。そのことを気にかけたからこそ、その後は自分の考えをあらためて脱出者の救助をしたとも考えられます。
つまり、自分の非を認め、他人の意見をくみ上げることをする。こう考えていくとマ・クベはただ陰険な悪役というよりも、理想的な上司像なのかもしれないと思いませんか?