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『無敵鋼人ダイターン3』の最終回 勝利に笑顔しない、主人公の言葉のナゾ「僕は…いやだ!」

1979年3月31日は、TVアニメ『無敵鋼人ダイターン3』の最終話「万丈、暁に消ゆ」が放送された日です。主人公の破嵐万丈は人類に反乱を起こしたサイボーグ「メガノイド」の首領であるドン・ザウサーを倒し、人類に平和をもたらしますが、共に戦い続けたアシスタントたちや執事のギャリソン時田たちは屋敷を去り、物語は静かに終わりを迎えます。

火星での最終決戦後、破嵐万丈の表情は険しい

1979年3月31日に最終回を迎えた『無敵鋼人ダイターン3』 画像はDVDメモリアルボックス1(バンダイビジュアル)
1979年3月31日に最終回を迎えた『無敵鋼人ダイターン3』 画像はDVDメモリアルボックス1(バンダイビジュアル)

 1979年3月31日、TVアニメ『無敵鋼人ダイターン3』(以下、ダイターン3)の最終話「万丈、暁に消ゆ」が放送されました。「なぜ、メガノイドの原型サイボーグを開発した、あの破嵐創造の子供が、あなたの夢を壊そうとするのか」。『ダイターン3』の最終話、それまで万丈を苦しめ続けたコロスは、切なげな表情で物言わぬドン・ザウサーを抱きしめ、泣き崩れながらこう語りかけました。その姿ははかなげで美しく、それまで地球で数多くの破壊を繰り広げてきた凶悪なメガノイドとしての姿を見るのは難しいことでした。

 メガノイドの拠点である火星が地球めがけて動き出し、主人公の破嵐万丈たちは最終決戦のために火星へ乗り込み、メガノイドとの激闘を繰り広げます。そしてコロスを無力化した万丈はダイターン3に乗り込み、目を覚ましたドン・ザウサーとの文字通り最後の戦いに身を投じるのです。

 最後の、そして最強の敵との戦いということもありますが、万丈の表情は険しく、笑顔はありません。特に最終話の作画監督はキャラクターデザインを務めた故・塩山紀生氏が担当しており、その力強いタッチで描かれる万丈は絶えずりりしく、険しく、苦し気な表情を見せ続けます。塩山氏がこのとき絵に込めた力感は尋常なものではなく、そこに故・鈴置洋孝氏の熱演も加わって40年以上前の作品だというのに目を離せなくなるほどの迫力に満ちあふれているのです。

 やがて戦いに勝利した万丈ですが、笑顔を浮かべることはありません。

 全てが終わり、万丈が吐き出した言葉は……。

「僕は……いやだ!」

 何が嫌なのかは明確には語られません。それでも、ひょうひょうとした態度を取ることが多かった万丈が、明確に不快感をあらわにしたこの言葉は、万丈の心情を現した名ゼリフだと、筆者には思えるのです。

 果たしてこの言葉の真意は何なのか。多くのファンが飽きるほど語りつくし、考察し続けてきた内容であり、筆者も自分なりの答えを出していますが、おそらく正解ではないのでしょう。富野喜幸(現:富野由悠季)監督が語らない限り、永遠に答えの出ない問題です。

仲間たちの淡々とした別れ 屋敷に灯る明かりの意味は

 そして場面は万丈の屋敷へと移ります。時にけんかをしながらも、共に激闘を戦い抜いた仲間たちが去ろうとしているとき、万丈は姿を見せませんでした。三条レイカは「仕方ないわ。住む世界が違うんだもの」と言い残し、さっそうとその場を後にします。ビューティことビューティフル・タチバナはら迎えに来た豪華な車に乗り込みながら明日の朝食の話をしています。トッポも特に感傷に浸ることなく手荷物ひとつで歩み去り、ギャリソン時田は門に頑丈そうな鍵をかけて屋敷を出ると、雨に降られながらバスを待っているのです。

 この淡々とした別れを迎える前に、多くの話し合いが持たれたはずです。その結果、皆がそれぞれの人生を歩むことに決まり、最後の別れの日を迎えた。おそらくそういうことなのでしょう。万丈に惚れていたレイカやビューティがどのような理由で立ち去ることを決めたのか。そもそもダイターン3はどうなったのか。想像力をかき立てられるシーンです。

 やがてギャリソンが口ずさむオープニングテーマのリズムに合わせて再び屋敷が画面に映り、一室に明かりが灯って『ダイターン3』は終わりを迎えたのです。

 この一連のシーンにどんな意味があるのかはわかりません。最後に明かりを点けたのは万丈しかいないとは思いますが、やはり明確に語られたわけではありません。しかし意味が分からなくとも、戦いを終えた仲間たちとの別れを描くシーンとしては、今なおアニメ作品のなかでも屈指の演出ではないでしょうか。

 その後、富野監督は万丈を小説の主人公として新たな作品を立ち上げています。『破嵐万丈シリーズ』と呼ばれる作品群は全4冊が発行されており、『ダイターン3』からは万丈とギャリソンが登場しています。それだけ、「破嵐万丈」というキャラクターは富野監督にとって魅力的な存在だったのでしょう。再び新たな万丈の姿を見ることが叶うかは分かりませんが、もしその時が来たら、ぜひ楽しませてもらおうと少しだけ期待しています。

(ライター 早川清一朗)

【画像】キツすぎる、富野作品の最終回

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