衝撃的なドラマを生んだ「ガンダム強奪」の歴史。互いに機体を奪い合った作品も?
モビルスーツとしての「ガンダム」は、物語冒頭で狙われることが多い高性能機です。その成否とは関係なく、物語はガンダム強奪事件をきっかけに動くことになります。その歴史を振り返ります。
事件の発端となったガンダム強奪事件の数々
宇宙世紀0083年10月13日。後に「デラーズ紛争」と呼ばれた『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の物語が始まった日。つまり、アナベル・ガトーによる「RX-78GP02A ガンダム試作2号機 “サイサリス”」が強奪された日です。
試作2号機強奪事件は『0083』の中盤までの物語の中心となりましたが、強奪されたガンダムというのは何も試作2号機だけではありません。むしろガンダムという高性能MS(モビルスーツ)は、常に敵対者に狙われる存在といっても過言ではないのです。
作品発表の順番でいえば、『機動戦士Zガンダム』に登場した「RX-178 ガンダムMk-II」が初めて敵に奪われたガンダムでした。作品序盤でティターンズの開発した時期主力機としてティターンズカラーに塗装されたガンダムMk- IIでしたが、エゥーゴ側に鹵獲(ろかく)されてガンダムカラーに塗装され、皮肉にも敵エゥーゴの主力機として使用されてしまいます。
次作『機動戦士ガンダムZZ』も、金のためにジュドー・アーシタが「MSZ-006 Ζガンダム」を盗むところから物語が始まっていました。結果的にこのことが縁で、ジュドーはエゥーゴのメンバーとして「第一次ネオ・ジオン抗争」を戦うことになります。
そして、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』では、新型ガンダムの「RX-78 NT-1 アレックス」の奪取または破壊が目的のサイクロプス隊が物語の中心になっていました。
時系列では、『0083』はこの後に位置しています。当時、ガンダムシリーズの第1話は「ガンダム強奪」から始まる……などとファンから言われた時代でした。しかし、主人公側からガンダムが盗まれたということは初めてで、当時の『0083』はファンの間では異色の展開として話題になります。
逆に、宇宙世紀を通して考えると、すでに「一年戦争」において地球連邦軍からガンダムが強奪されたことがありました。ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』でニムバス・シュターゼンに強奪された「RX-79BD-2 ブルーディスティニー2号機」です。
余談ですが『機動戦士Vガンダム』では、ウッソ・エヴィンが主人公機「LM312V04 Vガンダム」に乗る前に、敵ザンスカール帝国のMS「ZMT-S12G シャッコー」を強奪して搭乗していたことがありました。それだけなら特筆することもありませんが、このシャッコーをモチーフに騎士ガンダムシリーズで「ゼロガンダム」という主人公キャラクターが作られています。
これは、『Vガンダム』放送中は、低年齢層を取り込むために登場MSのSD化は見送るという方針で、そのために主人公としてVガンダムは使用できなかったからでした。騎士シリーズ中盤で『Vガンダム』は放送終了し、以降はSD化されています。こういった事情からシャッコーをVガンダム以前の主役ゼロ号機と考える人もいました。