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『無限列車編』煉獄杏寿郎が見る哀しい夢 「承認欲求」がキャラクターを動かす?

各キャラクターを動かしている「承認欲求」

鬼殺隊最高位の柱たちも、お館様に褒められることを喜びとしている 『鬼滅の刃』第16巻(著:吾峠呼世晴/集英社)
鬼殺隊最高位の柱たちも、お館様に褒められることを喜びとしている 『鬼滅の刃』第16巻(著:吾峠呼世晴/集英社)

 いつも炭治郎が背負っている木箱のなかで眠っている禰豆子は、みんなが寝ているところに箱から出てきます。誰ひとり起きないので、禰豆子は不満顔です。禰豆子は兄・炭治郎の手を自分の頭に乗せて、なでてもらおうとしますが、炭治郎はぐっすり眠っているので、うまくできません。ムッとした禰豆子の表情も、なかなかチャーミングです。

 禰豆子に限らず、『鬼滅の刃』では頭をなでなでするシーンがたびたび描かれています。亡くなった父親の代わりに働く長男・炭治郎に頭をなでてもらう行為は、竈門家の子供たちにとってはうれしいことのようです。

 禰豆子が頭をなでてもらいたがる場面を観ていると、『鬼滅の刃』には「承認欲求」という人間の側面が描かれていることに気付きます。人間には誰かに褒めてもらいたい、自分の存在を認めてほしいという願望があります。「鬼殺隊」の隊士たちはリーダーである「柱」に認めてもらいたがり、「柱」たちはお館様こと産屋敷に褒めてもらうことを名誉としています。魘夢をはじめとする鬼たちも、鬼舞辻無惨に認めてもらうことを欲しています。

 そして、最強の剣士である杏寿郎も、父親に自分のことを認めてもらいたがっています。父親に振り向いて欲しくて、つらい修練に励んだことでしょう。今から100年以上前の、大正時代を生きる『鬼滅の刃』の個性的なキャラクターたちですが、現代社会で暮らす私たちと同じような悩みや喜びと共に生きていたようです。

承認欲求よりも上を目指す炭治郎

 頑張っている自分のことを評価してほしいという欲求は、誰もが欲する自然なものです。でも、この物語の主人公・炭治郎はちょっと違います。竈門家の長男として生まれ育った炭治郎は、父親を病気で失ったこともあり、大人になるのが早かったようです。承認欲求よりも、さらに上の段階を目指しているように感じられます。

 承認欲求の上の段階は、「自己実現欲求」と呼ばれ、難易度の高い最上級のものとして位置づけられています。早くに大人になった炭治郎は、鬼になった妹・禰豆子を人間に戻すこと、そして鬼舞辻無惨を倒すことを目標に掲げています。他の人が聞けば実現不可能としか思えない、途方もない夢を炭治郎は抱えています。でも、だからこそ、炭治郎は目先の心地よい夢に惑わされずに覚醒することができたのかもしれません。

 杏寿郎の最期や原作コミックの結末を知っていても、作画のディテールや演出の細かい部分に改めて触れることで、『鬼滅の刃』は新しい発見がいろいろとできる物語となっています。炭治郎たちの深層心理が投影された夢の世界を、じっくりと楽しんでください。

※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記
※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記

(長野辰次)

【画像】煉獄さんの笑顔が尊い…!「無限列車編」のキャラたち(6枚)

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