一緒に戦ってみたい『機動戦士ガンダム』の有能な指揮官たち【地球連邦軍編】
『機動戦士ガンダム』には、地球連邦軍・ジオン軍双方に数多くの提督たちが登場し、戦場に散りました。今回はそのなかでも地球連邦軍に所属し、采配を振るった3名の提督を紹介します。もしあなたなら、誰の下で戦いたいですか?
最前線で戦い抜き、宇宙に散った提督たち

●戦略・実戦の両面で活躍……ティアンム中将
ソロモン攻略戦に登場し、ソーラー・システム発射の際に「スペース・ゲート」と号令をかけていた将軍といえば、『機動戦士ガンダム』を魂に刻み込んだ方ならばすぐに思い当たることでしょう。ワッケイン提督率いる第3艦隊とホワイトベースに先鋒を命じ、ジオン軍の注意を引きつけ時間を稼がせ、ティアンム中将は主力艦隊を率いてコロニーの影で切り札のソーラー・システムを準備していました。
通常兵器の射程圏外からの超火力の投射という、必勝の作戦を実行に移して勝利に大きく貢献しました。残念ながらジオン軍のMAビグザムを駆るドズル・ザビの決死の突撃により、乗艦のマゼラン級戦艦タイタンと運命をともにしました。
ジオン軍の重要拠点であるソロモン攻略を任されていたことからわかる通り、ティアンムは地球連邦軍内でも屈指の実力を持つ指揮官です。一年戦争序盤にジオン軍が企図したコロニー落とし=「ブリティッシュ作戦」にも艦隊を率いて出撃していましたが、このときはジオン軍の新兵器「ザク」の戦術に対応できず大敗。しかし圧倒的劣勢にも関わらず、かろうじてコロニーの落着地点をずらすことには成功し、地球連邦軍の拠点・ジャブローへの落下を防いでいます。
その後は宇宙艦隊立て直しのための再建計画であるビンソン計画を立案し、軍の再編成に尽力しました。文武両道の名指揮官といえるでしょう。
●第一印象を覆し、軍人として鋭さを見せる……ワッケイン司令
幼心に最初は「この人、悪い人だ」と感じたのを思い出すのが、地球連邦軍の宇宙での拠点「ルナツー」の指令であるワッケイン少佐です。
4話で初登場し、軍の最高機密を知ったという理由でホワイトベースの全乗員をいきなり軟禁。しかもホワイトベースを追ってきたシャアのムサイを自らマゼラン級戦艦で迎撃に向かおうとするものの、仕掛けられた爆弾によって乗艦は大破する体たらく。その後はホワイトベース隊の活躍によって窮地を脱したこともあり、護衛のサラミス1隻をつけてホワイトベースを送り出します。
このときワッケインが語った台詞「寒い時代だと思わんか?」はTV版では戦死したパオロ艦長を悼む形で、劇場版では素人集団を戦場に送り出さなければいけないことを嘆く形で使われており、ワッケインがただの頭の固い軍人ではないことを示しています。
ソロモン攻略戦で再登場したワッケインは大佐に昇進しており、あいさつに来たブライトを「一人前の指揮官面になったな」と以前の対応が嘘のような鋭さを見せました。攻略作戦開始後は先鋒隊の指揮官を務め勝利に大きく貢献しています。しかしテキサス・コロニー近辺で、脱出を図るシャア・アズナブルのザンジバルと交戦し乗艦を破壊され、宇宙の塵と消えました。
●ニュータイプの萌芽も、レーザーの光に消えて……レビル将軍
作中での階級は大将。官僚型軍人の多い連邦軍のなかでは数少ない実戦派で、戦(いくさ)上手とされていた名指揮官です。素人集団でありながらジオン軍の執拗な追撃をしのいでいたホワイトベース隊に注目し、9話以降はたびたびマチルダ・アジャンに命じてGファイターを送り届けるなどの支援を行っていました。
オデッサ作戦ではヨーロッパ方面軍の司令官として前線で指揮を執り、ジオン軍に対し大規模戦役で初勝利を挙げ、戦線を宇宙に押し戻す大きな功績を打ち立てました。しかし、ソロモン攻略戦後にジオン公国公王デギン・ザビとの和平交渉に赴いた際、ギレン・ザビの命令で発射されたコロニーレーザーの直撃を受け、デギンもろとも戦死の憂き目を見ています。
一年戦争の緒戦となるルウム戦役でも指揮を執っていましたが、ザクの猛威により敗戦。ジオン軍の勇士、黒い三連星に捉えられ捕虜となりますが、脱走に成功し「ジオンに兵なし」と演説を行い、兵員不足に悩むジオン軍の実態を暴露。ジオン軍の猛威にさらされ講和に傾いていた地球連邦軍首脳陣に、戦争の継続を決意させる大きな力を与えました。
ソロモン到着時にはララァ・スンに感応するなど、ニュータイプ能力の片りんを見せていましたが、人類の革新を知ることなく散った、悲運の名将でもありました。
(早川清一朗)