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マンガ史を変えた「編集者の言葉」3選 鳥山明の人生を変えたのは…?

マンガ家にとっての担当編集者は最初の読者であり、その意見は重要です。なかには、何気ないひと言がマンガ史を動かしてしまう例もあるのです。

名作誕生のきっかけになることも?

鳥山明氏により生み出され、現在もアニメなどで多くのファンを魅了する『DRAGON BALL』第1巻(集英社)
鳥山明氏により生み出され、現在もアニメなどで多くのファンを魅了する『DRAGON BALL』第1巻(集英社)

 大ヒットマンガには必ず、スゴ腕の編集者がいます。最近では『チェンソーマン』(著:藤本タツキ)、『ダンダダン』(著:龍幸伸)などの大ヒット作を担当する林士平さんの敏腕ぶりが話題となっています。そんなマンガ編集者の何気ない一言がマンガ家のキャリアに良くも悪くも大きな影響を及ぼすこともよくあるようです。今回は、もしかしたらマンガ史を変えてしまったかもしれないマンガ編集者の一言を紹介します。

●『進撃の巨人』作者に「マンガじゃなくてジャンプ持ってこい」

 コミックスは累計1億部を突破し、作者の故郷・大分県にキャラクターの銅像が建立されるなど、今なお人気が衰えぬ『進撃の巨人』。作者・諫山創先生が新人時代、「週刊少年ジャンプ」に2回ほど作品を持ち込んでボツを食らったという話は聞いたことある人も多いのではないでしょうか。

 その時に原稿に目を通した編集者はなかなか手厳しい指摘をしたのち、「マンガじゃなくてジャンプを持って来い」と伝えたそう。ご存知の通り「ジャンプ」の三大原則は「友情、努力、勝利」。諌山先生の持ち込んだ作品はどうにもジャンプ色に欠けていたというのが、その編集者の判断だったそうです。

 結果として、諌山先生はむしろ「ジャンプらしさ」をそれ以上追求することなく、「別冊少年マガジン」の担当編集である川窪さんの目にとまり、私たちの知る大成功を収めることとなります。なお川窪さんは連載開始前であるにもかかわらず、諌山先生に「初版100万部を目指そう」と声をかけたそうです。まさに捨てる神あれば拾う神ありといえる、後世に語り継ぎたいエピソードです。

●鳥山明に「女の子を主人公にしたマンガを描け」

 今や世界の巨匠・鳥山明先生もまた、担当編集者の熱意とともにキャリアを築かれた方です。デビュー前の鳥山先生は早起きが苦手で会社を辞めたばかりの、ちょっとアレな青年でした。

 そんな鳥山先生がなんとなく描いて送った作品に目をつけた編集者が、鳥嶋和彦さんでした。鳥嶋さんはしばらく鳥山先生に500枚ものボツを出すスパルタ特訓を課し、ようやく本格的な連載の準備へと入ります。連載の主人公を天才科学者にしたいと主張する鳥山先生に対し、鳥島さんは女の子を主人公にするべきだと主張します。

 そこでふたりはある賭けをすることに。それは一旦、読み切りで女の子を主人公にしたマンガを描き、それがアンケートで3位に入らなければ新連載の主人公は科学者に、3位以上ならば主人公は女の子にするというもの。結果、アンケートは3位に入り、賭けは鳥嶋さんの勝ち。新連載の主人公は女の子に決まりました。その作品こそ『Dr.スランプ』に他なりません。

●マンガの神様に「勝手にコソコソすんじゃねーよ!」

 果たして「マンガ史を変えた言葉」にふさわしいかどうか判断は難しいですが、手塚治虫先生と「週刊少年チャンピオン」の伝説の編集長・壁村耐三さんの関係を象徴するエピソードとして紹介します。壁村耐三さんと言えば、「マンガ編集者=クレイジー」というイメージを作り上げたといっても過言でない人物。「チャンピオン」2代目編集長として発行部数を250万部に伸ばす敏腕ぶりもさることながら、やはり注目すべきは破天荒な人柄に由来する数多くのエピソードです。

 事件は壁村氏が手塚先生の原稿を取りに行った時のこと。他誌の編集者と一緒に原稿があがるのを待ち構えていると、自分より後にきたはずの編集者が先に原稿を受け取っているのを目撃。これに激昂した壁村氏はマンガの神様・手塚治虫に「勝手にコソコソすんじゃねーよ!」と怒鳴って頭を叩くという暴挙に出ます。

 これがまさかの新人時代の話だというのだから、驚きです。それでも秋田書店をクビにならず関係が続いていたからこそ、のちの『ブラック・ジャック』が生まれるのですから何が起こるかわかりません。

 編集者の役割は、何よりも漫画家の才能を引き出すことにあります。だからこそ賛否両論はあるかもしれませんが、時にあえて強い言葉で漫画家を焚きつけることも必要になるのでしょう。

 例えば約30年ぶりに新作を発表した巨匠が断筆したのは、編集者が手の描き方について苦言を呈したから……といった都市伝説もあります。その一方で、鳥山先生のようにある種のスパルタが功を奏した例もあります。担当編集と漫画家の間にある摩訶不思議な関係は今後、どう変わっていくのか。今まさにその過渡期にあるのかもしれません。

(片野)

【画像】スゴ腕編集者とマンガの天才により生まれた名作たち。銅像が建つほどの奇跡も(5枚)

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