『ガンダム』のお約束「生身の戦い」の意味 互いの思いをぶつけ合うが、結果は…
「ならば、今すぐ愚民どもに英知を授けてみせろ!」

●『Zガンダム』主要人物どうしが遭遇、人間の本音と本性をさらけ出す
続編である『機動戦士Zガンダム』でも、最終話「宇宙(そら)を駆ける」で主要人物が生身で一堂に会する場面が見られました。パプティマス・シロッコとハマーン・カーンに追い込まれたクワトロ・バジーナはコロニーレーザーの居住区画へと逃げ込みますが、シロッコとハマーンも後を追い、エゥーゴ、ティターンズ、アクシズの三勢力を代表する人物が図らずも相対することになりました。
ハマーンはシャアに執着するも、シャアはハマーンのもとへ行くつもりはなく、話は平行線に。また、シロッコは銃を出さずに登場し、ハマーンに銃口を向けられ狼狽する醜態を見せ、傲岸不遜な性格ゆえに相手を侮る性格であることが示されるなど、生身でこそわかる本音と本性があからさまになったシーンでもあったのです。
●『ガンダムZZ』相手を「求める心」と「拒絶」
『機動戦士ガンダムZZ』の最終話「戦士、ふたたび……」でも、わずかではありますが生身で本音をぶつけ合うシーンがありました。ジュドーとハマーン、ふたりのニュータイプが激突した最後の戦いで、コア・ファイターからはじき出されたジュドーに直接とどめを刺そうと、ハマーンもキュベレイのコクピットを飛び出します。
しかしジュドーは銃撃を巧みにかわすと、あろうことか鉄パイプでハマーンを殴打します。
心の奥底で、密かにともに歩む相手を探していたハマーンは「ジュドー、私と来い……」と叫びますが、ジュドーは拒絶します。寒く孤独な地位で生きてきたハマーンにとって、ニュータイプとしてともに歩める可能性があるジュドーへの呼びかけは本心からのものだったのでしょう。結局ジュドーはハマーンを拒絶してしましますが、もし応えていたらどうなっていたのかは興味深いところです。
●『逆襲のシャア』草原での取っ組み合い
そして前述したように、『逆襲のシャア』でもアムロとシャアは生身での戦いを繰り広げています。サイド1のコロニー・ロンデニオンで遭遇したふたりは、草原を転がりながら取っ組み合い、殴り合いを繰り広げ、互いの想いをぶつけ合いました。
いちパイロットとして見た現実をぶつけるアムロ。あくまで理想を叫ぶシャア。かつて幾度となく死闘を繰り広げ、時として味方でもあったふたりの間には、すでに深くて広い溝があることだけが明らかになり、最後の戦いへとつながっていきました。
「ガンダム』世界における生身同士の激突は、総じて「互いが分かり合えないことを再確認する」ために行われているように思えます。全てをぶつけあう前の、覚悟を決めるための最後の儀式。そういうものなのかもしれません。
(早川清一朗)