『ガンダム』のお約束「生身の戦い」の意味 互いの思いをぶつけ合うが、結果は…
ガンダムシリーズに登場する主人公とライバルたちは、「ニュータイプ」として心と心で通じ合えるにも関わらず、重要な局面では顔を突き合わせて短い会話を交わし、生身で戦うことがしばしばあります。しかしその行動は、「お互いに分かり合えない」結果に終わるのが定番となっています。
「今、君のようなニュータイプは危険すぎる」

生身。
全高10メートルを超える巨大兵器「モビルスーツ」が闊歩する宇宙世紀の戦いにおいて、人の肉体は、あまりにも頼りないものです。
「MS-06 ザクII」が手にする口径120mmのザクマシンガンは、RX-78-2ガンダムには通じませんが、もし人間に対して使用されたならば、直径12cmの金属塊は容易に五体を消し飛ばすでしょう。
それでも、生身でモビルスーツ相手に戦闘を行った事例は存在しています。『機動戦士ガンダム』第14話では、本国に帰りたいジオン兵が生身でガンダムに爆弾を取りつける勇敢さを見せ、ガンダムを窮地に陥れています。
『機動戦士Vガンダム』では、ウッソ・エヴィンを動揺させるために水着姿の女性兵士がガンダムに群がり、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』ではシロー・アマダが3機のザクを相手にロケットランチャー片手にゲリラ戦を仕掛けています。
しかしこれらの戦いは、巨大なマシン相手に生身で戦わなければいけない状況に追い込まれたためでもあります。本来、「ガンダム」は生身で決着をつける世界では無いのです。
それでも、「ガンダム」には生身の人間同士が戦う場面がしばしば描かれています。それらの場面は、数多くの因縁に彩られてきた登場人物たちが思いのたけをぶつけ合うケースが多く、印象的なシーンとして多くの人の心に残っています。
●『機動戦士ガンダム』最終話のアムロとシャア
代表的な場面として知られているのが『機動戦士ガンダム』最終話「脱出」で繰り広げられた、アムロとシャアの戦いでしょう。
互いに乗機を失い、もはや戦う意味はない状況にも関わらず、シャアは強力すぎるニュータイプであるアムロを危険視し、あるいはララァを殺された恨みからか戦いを挑みます。
ふたりの男は激しく言葉を交わしながら戦い続けました。最終的にはアムロの剣がシャアのヘルメットを貫通し額を傷つけ、アムロは右腕を貫かれたところで、セイラとララァの介入もあり、戦いは止まります。このときつかなかった決着は、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にまで引き継がれ、そこでも生身の戦いが繰り広げられたのは真に「因縁」というものなのでしょう。