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【漫画】不登校の少年が出会った、負傷したプロ野球選手 絶望がつないだ絆に涙

読者に教わった「気付き」とは?

逃げ出そうとする理雄を引き留める松嶋(中村環さん提供)
逃げ出そうとする理雄を引き留める松嶋(中村環さん提供)

ーー読者からは「活力をもらえる!」との声が多くあがっていた『ラッキーボーイ』。この作品を描くうえで、工夫した点を教えてください。

 当時の自分の持てる全力を尽くして描いてはいるのですが、あまり意図して工夫して描いたわけではなくて何が読者さんの心に響くことになったのか、自分でも詳しくはわかりません(笑)。

 でも強いて上げるならば、例えば大谷翔平選手がホームランを打ったというニュースをTVで見て活力をもらえるのってなぜなんだろうと考えると、大谷選手と自分に、何か共通のものを見出しているからかなと。主人公の理雄や、憧れの存在である松嶋と、読者が「自分と同じだ」と思ってもらうことが大切だと思いました。なので、同じだと思ってもらえるようなリアリティを持たせたいなと思い、エピソードひとつひとつにページ数をとって心情を丁寧に取り上げようと心がけました。あとは、野球選手のほかに私がヒーローだと思っている人たちがいて、それは漫画家を目指すマンガ友達なのですが、その人たちと接するなかで私が実際に感じていたことを描いたからなのではないかと思っています。

 作中の理雄と松嶋も特段深い仲かと言えばそうではありません。病室ですれ違っただけの人です。勇気を与えあう存在は、必ずしも仲の深い相手だけではありません。実は、理雄の「学校も行けないし野球もやめてしまう」絶望的な世界線に、別世界の住人だと思いたかったはずの、あこがれの野球選手が落ちてきてしまったと感じたことが理雄にとっての絶望を強める要素になっています。

 ただ、同じ病室に存在したという事実が、松嶋の「一軍に戻り、ホームランを打てる世界線」とクロスして、理緒と松嶋の世界線が地続きであるということが理雄を勇気づけたし、松嶋も理雄の「理雄がうまくいったからきっとうまくいく」世界線とクロスすることで、勇気づけられるというのをやりたかったです。私のマンガ表現はまだまだ未熟で、それが表現できているかというと全っ然っうまくできなかったので、そこは反省して次回はもっと分かりやすく伝えられるように頑張りたいです。

ーー作中では「ゲン担ぎ」が重要なキーワードになっています。中村環さん自身の「ゲン担ぎ」はありますか?

 靴ひもを左から結ぶとかそういうのはあまりやりませんが、自分の調子が良かった瞬間をもう一度再現するということはよくあります。例えばスマホを家に置いて早歩きで散歩をしたときにアイデアが浮かんだことがあったら、もう一度やってみるとか。

ーーたくさんの感想が寄せられていますが、特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について、教えて下さい。

 どれもすごくうれしかったです! わざわざ貴重な時間を使って伝えようと思ってくださったことがまずうれしいです。特に印象に残ったという点であれば、伝わったことや自分なりの解釈を教えてくださったのがすごく勉強になりました。例えば、「ゲン担ぎは効果がある・ないではなく、心のチューニングに使うものだと思っている」ことや、「誰だって見えない将来は不安だけど、自分なりのお守りを見つけたら大丈夫かも」、「言語化するのにも行動を起こすにも不安はあるけど、大丈夫だと自分が信じてあげることが大切」というご感想です。

 作品を制作していたとき、伝えたいメッセージはあったものの、それは複数のものがぐちゃっとからみ合った毛糸玉みたいなやつで、当時の自分の力では因数分解できず、テーマをマンガ賞の締め切りまでに絞り切れなくて、だったら全部描こう、と整理がつく前に作品を仕上げてしまったという苦い経緯がありました。なので、ご感想を読んで、そうか、私はこれを描きたかったんだ、という気付きになりました。読者の皆さまには本当に感謝です。

ーーTwitterで数多くの創作マンガを公開されている中村環さんですが、今後の創作活動などでチャレンジしてみたいことはありますか?

 3つやりたいことがあります。ひとつめは、今回の『ラッキーボーイ』のような渾身の一作をまた描いて、それをマンガ雑誌に投稿してマンガ賞で自分がどこまでいけるかを試してみたいです。

 ふたつめはTwitterで、ライトであたたかみのあるショートマンガを描きたいです。会社員時代にお金も時間もなくて体調も悪くて、でも助けを求められるような友達もいない孤独なときに、お金をかけずに手に入る癒やしに救われたので、自分のような人のために、クスッとできて、癒やしになるような……そんなお話を描きたいです。

 3つめはマンガを描き続けることです。私はモチベーションに波があってすぐさぼってしまったり、つい人や仕事を優先し、自分のやりたいはずのマンガを後回しにしたりしがちなので、描き続けるということをひどく難しいと感じています。なので、継続的に作品を描き続けるための対策をしていきたいです。

(マグミクス編集部)

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