『SPY×FAMILY』<黄昏>が所属するWISEとは? 元ネタになった組織を考察
黄昏はジェームズ・ボンドと同僚?

しかし『SPY×FAMILY』は過去のスパイ映画から多数のオマージュを受けた作品ですが、実のところスパイ作品華やかなりし時期にも、連邦情報局が登場する作品はあまりありません。おそらくWISEの描写に最も大きな影響を与えたのは別の組織である可能性が濃厚です。
フィクションにしばしば登場する情報機関としてはアメリカの中央情報局(CIA)や連邦捜査局(FBI)などが挙げられますが、WISEの元ネタとなっているのは、イギリスの秘密情報部ことMI6であると思われます。理由としてはWISE本部の建物とMI6の建物は、水辺に建てられている点や角ばった形状、窓の形など酷似している部分が多数あるためです。
また、ロイドのキャラクター性や作中での活動などには「007」シリーズの主人公であるジェームズ・ボンドの要素が強い影響を受けているフシが多々見受けられますが、ボンドが所属している組織こそがMI6なのです。
MI6は国外の政治・経済及びその他の情報収集や工作を任務とする組織であり、第一次世界大戦勃発時に組織され、当初はMI(c)と呼称されていましたが、1930年代後半にMI6の名称が割り当てられています。「007」シリーズの著者であるイアン・フレミングは元MI6の諜報員であることを公表していましたが、イギリスは公式にその存在を認めてはおらず、1994年にようやく公表しています。東西冷戦下において、MI6が持つ重要性を物語るエピソードです。
組織の概要については不明な点も多いのですが、2500名の人員を擁しているとされています。組織を統括する本部の下に「地域課」と「連絡課」が存在しており、地域課が現地情報の収集及びエージェントの発掘・育成を行ない、連絡課が集積された情報を本部に伝える形で役割分担がなされています。
東西冷戦の時期には数多くのスパイ作品が登場し、多くの人を楽しませていましたが、近年ではあまり姿を見なくなっています。『SPY×FAMILY』のようにスパイ要素を抽出し、作品を彩るエッセンスとして効果的に使用した作品の登場が、また新たなスパイ作品を生み出す原動力になってくれるのかもしれません。
(早川清一朗)