『SPY×FAMILY』アーニャを構成する2つの要素「超能力」と「孤児」 現実世界との共通点とは?
孤児の境遇は厳しい

アーニャを構成するもうひとつの要素が元・孤児です。アーニャはヨルのことを「はは」と呼びますが、実の母親のことを「ママ」と呼ぶシーンがあります。逃亡後にママのところに行かず、孤児院で過ごしていたのですから何らかの理由でもう会えない状況にあると考えて良いでしょう。
アーニャの初登場時、ロイドが孤児院を訪れた際に境遇の悪さに驚いていたシーンがありました。ロイド自身も戦争で家族を失った孤児であり、孤児院の待遇は知っていたはずです。それにもかかわらず驚いているということは、アーニャがいた東国の孤児院の状況は相当に酷いということなのでしょう。
『SPY×FAMILY』の舞台となっている1960年代から70年代、現実社会でも悲惨な孤児院運営が行われている国がありました。それが東側諸国のひとつ、ルーマニアです。当時独裁を行なっていたニコラエ・チャウシェスク大統領は人口を増やすために妊娠中絶を法律で禁止し、離婚にも大きな制約をもうけました。また多くの子供を生んだ女性を公的に優遇しましたが、多数の育児放棄を招き、結果として子供たちは孤児院に引き取られていきました。
激増した孤児たちに対し国家の支援は十分とは言えず、子供たちは十分な食事も無く栄養失調に陥ります。子供が死ぬと孤児院の職員の給料が減らされるため、病気治療の際には輸血が行われましたが、エイズのまん延を招くなど状況は悲惨を極めました。この子供たちは「チャウシェスクの落とし子」と呼ばれ後々まで深刻な社会問題となりました。
このような問題はルーマニアだけでなく、日本でもさまざまな悲惨な出来事が現在進行形で起こっています。かつての孤児院、現在の児童養護施設では、施設をでたら男性は反社会勢力の構成員に、女性は風俗の世界に流れる人間がいると言われています。お金も頼れる身内もいなければ、そういう方向に流れていくのはどうしようもないことなのかもしれません。
人の心が読めるアーニャは占い師などの生き方を選ぶこともできたでしょうが、少なくとも、今は頼りになる「ちち」と「はは」に囲まれて暮らしています。このままイーデン校で友人を増やし、社会の動乱に巻き込まれずに幸せになってくれることを祈ります。
(早川清一朗)





