3次元だけ見ている人が多い? 大成功した実写版と原作マンガを数値で比較してみたら
実写から人気が逆輸入した作品も

●『ROOKIES』
続いては、『ろくでなしBLUES』でも知られる森田まさのり先生のヤンキー野球マンガ『ROOKIES』です。ドラマ、映画ともに実写版大ヒットの代表例と言えます。
・原作累計発行部数 2100万部
・1巻当たりの平均発行部数(全24巻)87万5000部
・実写ドラマの平均視聴率 14.96%、視聴者数は約1887万人
・映画国内興行収入(『ROOKIES-卒業-』)85.5億円(2009年公開邦画で1位)、推定観客動員数615万人
さすが「週刊少年ジャンプ」作品というべきか、原作総発行部数は24巻で2000万部越えで、かなりのヒット作と言えます。
そして、大ヒットした実写版シリーズは、視聴率から計算するとドラマは約1887万人が視聴し、映画は約610万人も動員した計算になります。原作もヒット作ですが、単純に1巻当たりの発行部数と比べると、実写版を見た人の方がかなり多い計算になります。こちらも原作と実写版で違いが多いので、見比べてみてください。
●『孤独のグルメ』
『孤独のグルメ』(原作:久住昌之、作画:谷口ジロー)の原作は、全2巻しかありません。そんな短い原作のトレビドラマが9シーズンも続いているのは、テレビが完全にオリジナルストーリーだからです。同作の数値を見てみると、
・原作累計発行部数150万部
・一巻当たりの平均発行部数(全2巻)75万部
・実写ドラマの平均視聴率約4%(シーズン9までの大体の平均)、推定視聴者数503万人
平均視聴率から計算すると、TVドラマは1話当たり原作の7倍弱の503万人が視聴したことになります。原作累計発行部数を遥かに上回っており、ドラマのみ知っている人がかなり多いようです。かくいう筆者も原作を読んだのはテレビ放送を見た後でした、
知る人ぞ知るマンガだった『孤独のグルメ』は、テレビドラマの放送開始以降急激に発行部数を伸ばしました。放送開始された2012年時点の累計発行部数はわかりませんでしたが、2015年初頭時点に40万部だったのが、2019年秋口では97万部、2020年には150万部を突破しています。『孤独のグルメ』は2015年以降、新刊が出ていませんので、この伸びはテレビドラマの影響ではないかと思われます。メディアミックスの理想的な展開ですね。
●番外編:『ルーズ戦記 オールド・ボーイ』
最後に、国内市場以外の例として、韓国映画『オールドボーイ』として実写化された『ルーズ戦記 オールド・ボーイ』(原作:土屋ガロン、作画:嶺岸信明)の例です。
・原作(全8巻)累計発行部数 不明
・世界興行収入 $15255474、推定観客動員数150万人
原作発行部数は残念ながら、調べても不明でした。何のニュースにもなっていない上に、8巻しかないマンガのため、原作累計発行部数は100万部を切っているのではないかと勝手に推測しています。実写版公開後の2007年にアイズナー賞(アメリカで最も権威ある漫画賞のひとつ)も受賞している名作ですが、読む人を選ぶタイプのマンガなので一般受けはしないでしょう……。
映画版の観客動員数ですが、映画大国アメリカは州によって料金が異なります。平均すると、映画館入場料は9ドルだそうです。また、ヨーロッパは物価の高い北欧と映画産業の盛んなフランスなどで差がありますが、間を取って10ドルぐらいとします。大雑把な計算ですが、映画は公開時に全世界で150万人以上が見ているはずで、原作を大きく上回っているのは間違いないでしょう。カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞するほどの高評価な作品で、DVDや配信などで見た人もどんどん増えていっているはずです。原作が8巻で80万部だとすると(1巻あたり10万人)、映画の観客は15倍、もしくはそれ以上いると考えられます。
なお、韓国実写版はその後、ハリウッドでリメイクされています。日本で映像化されなかった原作が最終的にハリウッドに行くのですから、何がヒットするかなど、結局は誰にもわからないと言えるでしょう。
(ニコ・トスカーニ)