人生ゲームはどうつくられる? 50年間、絶対に変えないこと、絶対に入れたかったものとは
親子のコミュニケーションを意識
「子どものころ人生ゲームを楽しんだ人が大人になり、その楽しかった思い出を子どもへ引き継ごうと思った時、『リニューアルされてはいるけど、大枠や雰囲気は変わっていない』と感じられるよう、変える必要のないところは、極力変えないようにしています」(池田さん)

「家族で遊ぶことは、人生ゲームにとって、重要なテーマです。子どもがマス目の内容をほぼわかっていなかったとしても、親と一緒に遊ぶことで、都度、親に聞きながら、理解を進めることが可能になります。
ただ与えられたことをやるのではなく、探究心を持ち、『このマス目はどんな意味なのだろう』と話し合うことで、コミュニケーションや学習にもなると考えています。たとえば、お金に関しても、ゲームを介しながら『借金はよくないことなんだよ』とか、大人から学習できるという」
「このままでは忘れられてしまうのでは」という危機感
ですが、「親から子へ」という構造は、近年変わり始めているといいます。
「最近、親子間のコミュニケーションが希薄になりつつあります。一緒にはいても、それぞれがスマホとタブレットを持ち、それぞれの液晶を眺めているなど、会話の機会が減っているように思うのです。そうなると、人生ゲームを親子間で伝え聞いて楽しんでもらうことも、難しくなってしまうでしょう。このままでは、忘れられていってしまう可能性があるんじゃないか……と、危機感を持っています」
そのため、タカラトミーでは、子どもに対し、ダイレクトに人生ゲームを伝えていきたいという思いを持ちながら「まちあそび人生ゲーム」を実施しています。
「まちあそび人生ゲーム」とは、現実にある商店街を人生ゲームのボード盤に見立て、参加者が商店街を散策するもので、小学生以下は保護者の同伴が必須。子どもは、事前に親から人生ゲームの詳細を伝え聞かずとも、その場で直接体感し、人生ゲームを知ることができます。
そのほか「みんなでつくる人生ゲームプロジェクト」を足立区の辰沼小学校で行ったほか、沖縄県竹富町の11つの小学校合同で実施。これは、授業の一環として、人生ゲームのマス目を考えたり、それをもとに、手づくりの人生ゲームをつくるものです。
「このことをきっかけに、人生ゲームをやりたくなったという子が沢山いたという話も聞きました。こういう活動は無駄じゃないんだなと感じています」

池田さんは、人生ゲームの今後について次のように話します。
「人生ゲームは、年末年始やゴールデンウィークなど、皆で集まった時はやるんですけれど、そのあとは押入れに入れたままになってしまうことも多いゲームです。時間もかかりますし、場所もとる。めんどくささもあるので皆やりづらいのではないかと思います。
ですが、大枠を変えてしまうと、人生ゲームではなくなってしまうので。そんななかで、いかに日常的に遊んでもらえるかというのが今後の課題ですね」
国民的ゲームでありながらも、「忘れられないように」という危機感を持ち、常に新しい取り組みを続ける人生ゲーム。もし、あなたの家の押入れのなかに、しばらく使っていない人生ゲームがあるとしたら、ぜひその箱を開いてみては。
(マグミクス編集部)