【春アニメ1話レビュー】『消滅都市』 深夜アニメを継承する”謎”を散りばめた展開
シリーズ5周年を迎えた人気アプリゲーム『消滅都市』が満を持してアニメになり、2019年4月8日から放送されています。放送された第1話の内容から、作品の楽しみどころを紹介します。
深夜アニメのセオリーを引き継ぐ、「謎」を散りばめた展開
2019年4月8日から放送開始したテレビアニメ『消滅都市』(TOKYO MXほか)。原作はWright Flyer Studiosが開発・配信しているスマートフォン用ドラマアクションRPGゲームアプリの同名タイトル『消滅都市』です。
人気ゲーム待望のアニメ化の最初を飾るのは、無影灯がある手術室に少女が横になっているシーンです。周囲には、多くの白衣の男たちが立っており、少女の頭に脳波を測定するようなパッドが複数装着されていることから、この少女がただ者ではないことが伺えます。
場面は変わり、アイドルのライブの様子が街中のスクリーンに映し出されています。渋谷スクランブル交差点の中央に先ほどの少女が立ち、スクリーンを笑顔で見つめています。
突如、渋谷の街に爆発が起こり、叫び声が響き、逃げ惑う人々で大混乱します。その爆発の最中、少女は「ユキ(CV:花澤香菜)」と呼ばれ、ユキを呼んだ男性は「アキラ(CV:中村悠一)」と呼ばれていました。
なんとも衝撃的なスタートです。ユキが何者で、この爆発とはどういう関係なのか、現時点では一切わかりません。一方で、こうした”情報を限定する”という演出は、昨今のヒットアニメの定石なのです。
1990年代後半に、深夜アニメという放送枠が作られました。少子化の影響で子供向けアニメの需要が低下したことを受けて、大人向けのアニメも製作されるようになりました。予測できない展開、難解な用語やストーリー、登場人物の複雑な心象描写など、多くの大人たちを取り込むのに十分な要素が盛り込まれたのです。
「どういった展開になるのか?」「あのセリフはどういう意味か?」「ラストシーンの解釈は?」といった自身の考察を議論するという、今では当たり前になっているアニメの楽しみ方がブームを押し上げました。インターネットの普及が進むにつれて、不特定多数の人びとと交流が可能になったことも背景にあるといえます。
「衝撃的なシーン」と「いくつかの謎」を提示することで、ファンが考察し議論が白熱し、盛り上がるといったセオリーを本作品は踏んでおり、すでにアプリゲーム版『消滅都市』でも、さまざまな考察がSNSを中心にみられます。
運び屋のタクヤ(CV:杉田智和)が、謎の少女ユキの父親からの暗号化されたメッセージを頼りに、ユキを連れて、消滅した都市「ロスト」に向かうことになりますが、その道中、謎の組織から攻撃を受けます。攻撃を仕掛けてくる敵は、すべて未知の超能力を持っており、なぜタクヤとユキが狙われるのか、その理由はまだ明かされません。
アニメ『消滅都市』は、ユキの正体、対する謎の組織の存在、そしてなぜ都市は消滅したのか……といったさまざまな謎を散りばめ、スピーディーに展開していきます。ゲームのファンはもちろん、ゲーム版を知らない人もその展開に惹きつけられ、今後の展開が見逃せない期待作です。
(二木知宏)