「若さ故の過ち」では済まない? 『まんが日本昔ばなし』の若者がやらかすトラウマ話
過ぎた力は破滅への一本道
●「とうせん坊」:1978年12月9日放送

むかしむかし、今の岩手県のあたりで、とうせん坊と呼ばれる大男が、高下駄の音をカッカと響かせながら、たいまつ片手に暴れまわっていたそうな。
とうせん坊には親がなく、小さな寺で育ちましたが、身体は大きいのに頭は少々足りない男で、いつも周りからはいじめられたり馬鹿にされたりしていました。そんな生活が嫌になったとうせん坊は観音堂にこもり、「力を下せえ、天下一の力持ちになって、世間の奴らをあっと言わせてやりてえ」と、涙を流しながら祈り続けました。
その日、とうせん坊の夢のなかに観音様が現れました。観音様から渡された手毬を食べたとうせん坊は、目覚めると望み通りにとんでもない怪力を授かっていたのです。
しかし、とうせん坊は突然与えられた力の使い方を知りません。村の奉納相撲に参加したのはいいものの、力の加減が分からず、他の参加者を次々と殴り殺してしまったのです。村から追い立てられたとうせん坊は山にこもりましたが、村人たちは居所を突き止め、仕返しのために留守の間に鍋へ糞をしていきました。
とうせん坊は怒り狂います。村に火をつけ、家畜を絞め殺し、人を殴り殺し、さんざんに暴れまわったのです。その後生まれた村から姿を消した彼は、それから数年後に越前(福井県)の「東尋坊」と呼ばれる岬の近くに住み着きました。東尋坊の景色も気に入って暮らしていたある日、人がよさそうな人びとに酒を進められたとうせん坊は、久しぶりに人の温かさに触れ、たっぷりと酒を飲み、酔いつぶれて寝てしまいます。
夢のなかでおっ母の歌う子守唄を聴いていたとうせん坊でしたが、目が覚めたとき、ぐるぐるに縛られて担ぎ上げられていました。「おっ母……」とうせん坊のつぶやきに、耳を傾ける者はおりません。とうせん坊はそのまま崖から投げ落とされ、海の藻屑と消えたのです。
その後、東尋坊で吹く春の強風は「とうせん坊」と呼ばれ、それはそれは恐れられるようになったそうな。
幼い頃から虐げられていた若者が力を与えられたらどうなるか、力に振り回されたらどうなるか。歳を取り、経験を積んだ人間ですら、力を持てば簡単に暴走するものです。若者であれば、なおのこと。もし特別な力を得る機会があれば、老いも若きも自らを省みて、その力を使う判断力が自らに備わっているかを、じっくり考える必要があるのでしょう。
(ゆうむら)


