「幻の大作」と呼ばれた実写版『火の鳥』 若山富三郎、草刈正雄ら豪華俳優が共演
永遠の命よりも大切なもの
実写版『火の鳥』の主軸となるのは、少年・ナギ(尾美としのり)とナギの一族を滅ぼしてしまった猿田彦(若山富三郎)が、ともにサバイバルを重ねていくうちに、擬似親子のような関係になっていくストーリーです。猿田彦はナギにとって憎むべき相手ですが、猿田彦によってナギは何度も命を救われます。血よりも濃い絆で、ナギと猿田彦は結ばれていきます。
一方、永遠の命を求める女王・ヒミコ(高峰三枝子)は、弓の名人である弓彦(草刈正雄)に命じて、火の鳥を捕らえ、その生き血を飲むという願望に取り憑かれます。そのために、多くの部族は滅ぼされ、またヒミコに異議を唱える者たちも罰せられるのでした。『犬神家の一族』では佐清の母・犬神松子を演じた高峰三枝子さんの、貫禄たっぷりな女王ぶりに圧倒されます。
ヒミコと同様に、永遠の命を得ようと火の鳥を求めた者たちは、次々と自分の命を縮めることになります。人間の価値や生きる喜びは、どうやら生命の長さとは関係ないようです。ナギから「父さん」と呼ばれた猿田彦が大喜びするシーンが、ひときわ印象に残ります。戦うことしか知らなかった猿田彦ですが、愛される喜びを知って、命を燃やし尽くすのでした。
続編として企画された『愛のコスモゾーン』

時間のある方には、手塚治虫総監督による劇場アニメ『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』(1980年)もおすすめします。こちらもAmazon Primeビデオで配信中です。「黎明編」を原作にした実写版『火の鳥』の続編として企画された、オリジナルストーリーとなっています。
そう遠くない未来の地球人類は滅亡の危機に陥り、宇宙ハンターのゴドー(CV:塩沢兼人)は、女性型ロボットのオルガ(CV:三輪勝恵)、サルタ博士(CV:熊倉一雄)らと、「宇宙生命体2772」こと火の鳥を捕獲する旅に向かいます。
ゴドーのピンチを、変身能力のあるオルガは何度も救います。でも、オルガのそんな世話焼きぶりが、筆者は公開当時にはどうも好きになれませんでした。なぜか、万能ロボットのオルガのことが、ひどく野暮ったく感じられたのです。
ずいぶんと歳月が流れ、オルガを野暮ったく感じた理由が分かりました。育児用ロボットでもあったオルガと、自分の母親とを重ねて見ていたのです。
田舎に帰省しても、もう母親はいません。以前は野暮ったく思えたオルガのことが、今ではとても愛おしく感じられます。時間とは何か、命とは、愛とは何か。そんな根源的なことを思い出させてくれるのが、『火の鳥』という「永遠の物語」なのかもしれません。
(長野辰次)





