主人公は小学校のクラス全員? 定石を崩したロボットアニメ・エルドラン3部作
1991年から始まった『絶対無敵ライジンオー』『元気爆発ガンバルガー』『熱血最強ゴウザウラー』のエルドランシリーズは、「もしも学校が秘密基地だったら」という、小学生が思い描く夢をそのまま具現化したロボットアニメでした。今回は定石を覆したエルドラン3部作について振り返ります。
ライジンオーは古き良きロボットアニメと全員参加型の世界を確立!

ロボットを操れるのは選ばれた数人だけ……そんなロボットアニメの定石を覆したのが、『絶対無敵ライジンオー』をはじめとする『エルドラン』3部作でした。伝説の戦士に力を託されたのは、とある小学校のクラス全員です。今回は、みんなが主人公になって悪の帝国と立ち向かうライジンオー、ガンバルガー、ゴウザウラーの足跡と魅了を紹介します。
『エルドラン』シリーズに共通しているのは、地球の守護神であるエルドランに力を託された小学生たちが、力を合わせて悪から地球の侵略を守るという点です。各作品のメインパイロットである日向仁(『絶対無敵ライジンオー』)、霧隠虎太郎(『元気爆発ガンバルガー』)、峯崎拳一(『熱血最強ゴウザウラー』)はいずれも運動神経がいいものの、勉強が苦手という典型的なわんぱく少年でした。
第1作『絶対無敵ライジンオー』が放送されたのは1991年で、1979年『機動戦士ガンダム』から始まったリアルロボット路線が全盛の頃でした。大人向けの作品ばかりが作られていたなかで、1980年『無敵ロボ トライダーG7』のような古き良きロボットアニメの原点回帰として『ライジンオー』が企画されます。そのなかで、学校のクラス全員が協力して、侵略者を倒すというアイデアが生まれたのです。
地球を狙うジャーク帝国との戦いに傷ついた神秘の戦士エルドランは、陽昇学園5年3組全員にライジンメダルを託しました。生徒全員が教室の机にメダルをセットすると教室は司令室に、校舎は秘密基地になります。また校舎や体育館、プールから発進するのが剣王、鳳凰、獣王の3体です。そして、3体のロボが合体することでライジンオーに変化します。
5年3組の18人は「地球防衛組」になり、毎回ジャーク帝国が送り込む、ゴミや排気ガス、ぬいぐるみなどモンスター化した邪悪獣と戦って地球を守りました。普通の作品ならモブキャラとして扱われる地味な生徒でも、ひとりひとりの個性と成長を描いていたのも同作の魅力といえるでしょう。ちなみに3作のなかでも人気が高いライジンオーは、番組終了後に3本のOVAが制作されました。
続いて1992年の第2作『元気爆発ガンバルガー』でエルドランが力を託したのは、小学校4年生の3人組です。その霧隠虎太郎、流崎力哉、風祭鷹介はエルドランから変身ヒーロー「ガンバーチーム」になる力を授けられ、暗黒魔王ゴクアークが送りこんだヤミノリウスIII世と対決します。
さらに、虎太郎の父・藤兵衛はヤミノリウスに呪いをかけられて犬(ゴン)にされてしまいました。藤兵衛が伝授する忍術修行を通じて虎太郎、力哉、鷹介はパワーアップしていきます。
3人は、まずイエローガンバー、レッドガンバー、ブルーガンバーのヒーローに変身し、ガンバーバイク、ガンバージェット、ガンバーバギーがそれぞれに乗り込み、さらに3体がゴウタイガー、マッハイーグル、キングエレファンの各コクピットとなり、最後に3体が合体してガンバルガーになります。
ライジンオーでは学校全体が拠点となっていましたが、今度は町内全体が秘密基地になり、住民たちと力を合わせて戦うという設定でした。しかし1993年の最終作『熱血最強ゴウザウラー』では、再びクラス全員が主人公になるという設定に戻ります。学年が6年生になり、中学受験や恋に関する独自のエピソードも生まれました。
『ゴウザウラー』のあらすじは地球全体を機械化しようとする「機械帝国」と戦うため、エルドランが3体の恐竜型ロボットを子供たちに託すというものです。ゴウザウラーと戦う機械化獣は鉛筆削り、懐中電灯、洗濯機など身近な道具がモンスター化したもので、敵なのにどこか憎めない愛嬌がありました。
同作では校舎自体がゴウザウラーと融合しているため、クラス全員がロボットに搭乗します。よりクラス全員で戦う姿勢が強くなりますが、対立も多くなり、ひとりひとりのキャラがぶつかりながら、成長していく物語でした。
そんな「エルドラン」シリーズは『ゴウザウラー』をもって終了します。多くのTVアニメの放送期間が半年から3か月と短くなっているため、エルドランシリーズのように数が多い主人公のアニメはなかなか作りづらいのでしょう。唯一無二の魅力を持つロボットアニメとして、今もなお語り続けられています。
(LUIS FIELD)