「ガンダムビルドシリーズ」誕生から10周年 「ガンダム」本編ではできなかった「最大の功績」とは?
「ビルドシリーズ」が切り開いた大きな可能性とは?

前述しましたが、ガンダムシリーズは戦争と兵器を描く物語として確立しています。それを取り除いてゲームとしてのバトルに変換した「ビルドシリーズ」は、これまでのガンダムではできなかったことをいくつか実現していました。
まずは「宿敵との共闘」でしょうか。もちろんガンダムシリーズでも実現したことはありますが、多くの場合は悲劇的な結末を迎えています。戦争のなかで命の取り合いをするわけですから当然のこと。和解の機会はそれほど多くありません。
ところが「ビルドシリーズ」では戦いを通じてお互いを理解し、終われば仲間として認め合うというのが黄金のパターンになっています。特に最終決戦ではこれまでのメンバーが集合し、大乱戦のなかで大団円を迎えるというのも「ビルドシリーズ」のパターンのひとつになっていました。
また、「ガンダム」の二次創作である「ビルドシリーズ」では、MSが新たなデザインになっているほか、オマージュされた場面やキャラクターが多くあります。このファンをニヤリとさせる「遊び心」も魅力のひとつではないでしょうか。
第一期『ガンダムビルドファイターズ』では、原典で悲劇的な道を歩んだキャラクターたちが幸せそうにガンプラを作っている場面があり、ファンの間で大きな反響を生みました。こういった本来の歴史では見られなかった場面を見ることができるのが「ビルドシリーズ」の良い点だと思います。
この原典で見られない夢の共演という部分は、ガンダムシリーズがリアルな世界観ゆえの弊害と言えるかもしれません。ファンが「見たい場面」というのは、時に整合性が合わない、設定的に矛盾があるといった正論で封殺されることがあります。
それゆえにアニメ作品でなく、ゲームやマンガといったジャンルでは整合性や設定を無視した夢の共演がよくありました。ファンというものはお遊びとしてこういった夢の共演を喜ぶわけですが、原典であるガンダムシリーズはリアル感を前提にした世界観ゆえに取り入れるのは難しい側面を持っています。
ところが「ビルドシリーズ」最新作になる『ガンダムビルドメタバース』では、これまでのアニメ主人公が全員集合するといった夢の共演を成功させていました。理屈ではなく見せ場を重視する。そういった柔軟さが「ビルドシリーズ」の魅力なのでしょう。
思えば『ガンダムビルドファイターズ バトローグ』では、AIデータとしてですが、リボンズ・アルマークとシャア・アズナブルの激突という夢の戦いを描いていました。さらにこのリボンズがアムロに変わるという二段オチです。
これまで「ウルトラマン」、「仮面ライダー」、「スーパー戦隊」と並ぶコンテンツでありながら、その世界観ゆえ主人公の共演という部分では後れを取っていた「ガンダムシリーズ」ですが、「ビルドシリーズ」によって可能になる時がやって来たのかもしれません。
(加々美利治)






