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『Zガンダム』ジオン大嫌いティターンズとジオン残党アクシズはなぜ同盟交渉できた?

『Zガンダム』のティターンズとアクシズはそれぞれ、旧ジオン公国の残党狩り組織と、旧ジオン公国の後継者を自認する勢力で、仇敵同士のはずですが、劇中では同盟交渉が描かれます。なぜ手を組めると考えたのでしょうか。

ティターンズには味方がいない

なんだか悪人面に見えてくるのはきっと気のせい。BANDAI SPIRITS「RG 1/144 ガンダムMk-II(ティターンズ仕様)」 (C)創通・サンライズ
なんだか悪人面に見えてくるのはきっと気のせい。BANDAI SPIRITS「RG 1/144 ガンダムMk-II(ティターンズ仕様)」 (C)創通・サンライズ

「ティターンズ」と「アクシズ」は、アニメ『機動戦士Zガンダム』の敵側陣営です。本作においては、スペースノイド(宇宙居住者)の保護のために戦う主人公側陣営の「エゥーゴ」に対して、スペースノイド独立を掲げたジオン残党を討伐する地球連邦軍の精鋭部隊ティターンズと、旧ジオン公国の後継者であるアクシズの3陣営(+ほぼ存在感のない地球連邦軍)が存在します。

 物語中盤でアクシズが登場した後は、エゥーゴとアクシズが同盟してティターンズに立ち向かう展開も見られる一方、ティターンズ総帥である「ジャミトフ」が、アクシズの指導者「ハマーン」と会談を持ち、協力を示唆する場面もあります。

 ジオン狩り組織であるティターンズと、ジオンそのものであるアクシズとは、本来、相容れない勢力であるはずなのですが、『Z』の世界では複雑怪奇なことが起こります。

 このあたり、「尊王攘夷」を掲げていた反政府勢力が、いつの間にか西洋から新型武器を購入し、それで江戸幕府を打倒して明治政府を作った上に「文明開化」と、当初と真逆なことをしている、日本の幕末の歴史を見ているかのようです。

 なぜ、ティターンズはアクシズとの交渉が成立すると考えたのでしょうか。また、アクシズはなぜ、ティターンズと協力の余地があると考えたのでしょうか。

 前提として、ティターンズの総帥である「ジャミトフ」と、その部下の幹部である「バスク」や「シロッコ」の思惑は、それぞれ異なっています。

 ジャミトフは軍人というより政治家であり、「地球を汚染する地球連邦政府や連邦のエリートを憎悪」し「戦争で人口を減らしてでも、地球の再生を実現したい」という思想を持っています。これは『逆襲のシャア』におけるシャアの行動原理に酷似しています。違うのは「排除されるべき愚民」にスペースノイドが入っているかどうか、くらいです。

 現場でティターンズを動かすバスクらは、ジャミトフの思想に共鳴しているわけではなく「反地球連邦のスペースノイドを弾圧するためには手段を選ばない」という軍閥です。

 シロッコに至っては「選ばれた存在が地球圏を導くべき」という思想はあるものの、宇宙を拠点とし、自身を含めて「ニュータイプ」を積極的に抜擢している存在ですから、スペースノイドを何も否定していないということになります。

 この三者がそれぞれの思惑で動くため、『Z』のティターンズはアクシズとも手を組む余地があるということです。

 整理すると、ジャミトフは「戦争で人口を減らした方が地球の汚染は食い止められる」と考えているので、バスクが非人道的手段でスペースノイドを殺戮しても止めないし、シロッコのような「優れたスペースノイド」は手駒として活用するわけです。

 ただ「戦争で人口を減らす」ティターンズの行動は、政治的には大失敗だと考えられます。ティターンズはニューホンコンでの戦いで、「サイコガンダム」により街を破壊しており、これは有力な財閥でマフィアでもある「ルオ商会」を敵に回す行為です。

 エゥーゴの本拠地と目した月面都市「グラナダ」に、スペースコロニーを落とそうともしました。ティターンズはそのグラナダに支社を持つ超大企業「アナハイム・エレクトロニクス」から「マラサイ」などのモビルスーツを供給されている立場ですから、これも重要な取引先を敵に回したことでしょう。

 また、地球連邦議会に「反地球連邦組織エゥーゴ」の幹部である「ブレックス」や「シャア」が出席できるのですから(ティターンズはブレックスがエゥーゴの指導者であると知っています)、地球連邦政府におけるティターンズの政治的基盤は、それほど強くはないと見られます。

 つまり、ティターンズが連邦議会で画策した「全地球連邦軍をティターンズの指揮下に置く」ことは、「政治的失敗による劣勢を、軍事的圧力で議会を従わせることにより解決しようとした」ということであり、そしてこれにも失敗した、ということになります。

【画像】「そこに正義はあるんか?」こちらがティターンズを主人公側陣営として描く作品です

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