「アニメ業界が一夜にして崩壊する可能性も」 アニメ制作と「生成系AI」にまつわる危機的状況とは
AI開発者が鳴らす警鐘「ビッグテックに全てやられる」

一方、国内のAI開発者たちも、クリエイター側とは別の懸念を抱いているようです。インターネットの歴史をなぞるかのように、このままではビッグテックにすべて飲み込まれてしまうのではないか、というのです。
例えば、YouTubeは今や誰もが利用する動画プラットフォームですが、誕生した当初は著作権侵害の巣窟でした。今世界的な覇権を握るデジタルサービスのなかには、そうした権利問題を度外視して「とにかくやったもの勝ち」という姿勢で大きくなってきたものも少なくありません。そして、一度プラットフォームを握られてしまうと、向こうの作ったルールに従わないと表現活動も事業展開までも、ままならなくなるのです。
それに、現在日本のアニメは世界中に配信され、多くのファンを獲得していますが、それらの流通を担うのは海外のプラットフォーム企業です。その配信権も、固定の買い取りになっている場合が多く、大ヒットしても現場に還元されないこともあるといいます。
Turingum株式会社の顧問でアニメチェーンのメンバー・三瀬修平氏は、AIに関しても同じことが起きる懸念を抱いています。
「基本的にビッグテックは、まず大きな投資を行ってスタンダードを作り、安い利用料で提供して大きなシェアを握ってから締め付けを行うというやり方を取っており、このままではAIでも他の選択肢がなくなる状況になってしまいます。そうさせないために国内で団結して、日本のプロが使いやすいもの、対抗馬となるものを作る必要があると思うんです」(三瀬氏)
アニメチェーンは、海外のビッグテックとは異なる開発の仕方を目指すようです。それはAI学習のデータ利用にもしっかりと許諾を取り、提供してくれたスタジオやクリエイターにも利益を還元するというもの。そしてそのAIデータを各社に提供し、それぞれが追加学習をさせたうえで、スタジオごとに特色を持った使いやすいAIにしていくというものです。
新井氏は、「ビッグテックに対抗しなければ、一夜にして日本のアニメ産業が危機的状況に陥ってしまう可能性もある」と警鐘を鳴らします。
しかし、それぞれのアニメ会社には、AI開発のための資金力もないし設備投資は簡単にできません。そうこうしているうちに、海外の会社がシェアを取ってしまえば、将来的にはその会社のツールを使うしかなくなります。
例えば、Adobe Creative Cloudのように、ある優れたツールが業界標準になると、大多数のクリエイターは活動を継続するためにそのツールの利用料を払い続けなければならない……という状況が起こります。生成AIの素材はクリエイターが作ったものであるにもかかわらず、クリエイターには還元されないまま、お金を払い続けるといった状況がAIでも起きるかもしれないという懸念を、アニメチェーンは抱いているということです。
アニメ業界は、著作権や学習素材データの無断利用などに、非常にセンシティブになっている状況ですが、アニメチェーンはそこに配慮する必要があることを認識しているようです。
では、実際にアニメチェーンはその課題にどう向き合い解決していくことができるのか。また法律のみならず、倫理的な面でもクリーンで説明可能なAIを目指し、ビッグテックにも対抗可能なのか……後編の記事ではそれらに迫ります。
(杉本穂高)






