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「波平は年収1千万」「マスオもスゴッ」 磯野家の収入にまつわる都市伝説を検証したら?

『サザエさん』の一家の大黒柱として知られる磯野波平は、54歳という年齢もあり、おそらく会社でも高い給料をもらっているのではないかといわれてきました。ネット上には「年収1000万円」説もありましたが、それはあるエピソードが生んだ「都市伝説」だったようです。

波平は実際高給取り?

『サザエさん』のキービジュアル (C)長谷川町子美術館
『サザエさん』のキービジュアル (C)長谷川町子美術館

 2024年で放送開始から55周年となる国民的アニメ『サザエさん』には、ネット上にさまざまな「都市伝説」的うわさが見られます。そのなかのひとつが「磯野波平は年収1000万円」説です。SNSでは波平の月の給与額が記された画像も出回っていますが、それは本当なのでしょうか。

 厚生労働省が発表した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」を見ると、世帯年収が年収1000万円以上の家庭の割合は12.6%で、1世帯ごとの平均年収は545万7000円です。個人で年収1000万円以上はさらに少ないでしょう。そして、前述の波平の月給の画像を見てみると、「2月分収入 波平給与 ¥785,420」となっています。

 785420×12の単純計算で、波平の年収は942万5040円です。また、dodaが発表した「2022年9月~2023年8月の1年間に支給されたボーナス」は平均で約2.56か月分ということだったので、当てはめてみると波平の年収は1143万5715円で、確かに1000万越えとなりました。

 さらにこちらの画像を見るとマスオさんの月給も書いてあり、彼は48万3002円を貰っていることになっています。28歳の給料としてはこちらも高めで、前述のボーナス込みの計算だと年収は約703万円です。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、2022年時点での男性平均年収は342万円でした。

 ネット上では波平やマスオさんたちの収入をうらやましがり、「昭和は景気良かったな」などの意見も出ていましたが、この画像の出どころはどこなのでしょうか。

 結論から言うと、この画像はアニメ『サザエさん』本編のものですが、年収に関してはでたらめです。出どころは1977年2月20日放送のエピソードのひとつ「まっ白い家計簿」で、こちらは配信サービス「FOD」で視聴可能となっています。

 このエピソードは、サザエさんが物価の上昇にうんざりし、家計簿をつけるのを3日でやめるところから始まりました。本棚の隅にある、空白だらけの家計簿を見たカツオは驚愕します。その後、ベンチの上に置かれた磯野家の家計簿を近所の主婦たちが発見し、先ほどの波平とマスオの給与を見て驚く場面が描かれました。この場面の家計簿のアップが画像の元です。

 さらにカツオ、ワカメ、タラちゃんの月のお小遣いはそれぞれ1万2000円、8000円、3000円となっていました。実にうらやましい金額が並びますが、これらはすべてカツオのいたずら書きで、よく見るといかにも小学5年生らしい字で書かれています。

 カツオがこの偽家計簿をベンチに置き忘れたせいで、あっという間に近所に噂が広まり、磯野家には別荘の売込みや銀行員、外車のセールスなどがやってきました。ワカメもクラスメイトにお金を貸してほしいと頼まれる事態となったところで、波平にカツオがいたずらをした家計簿を発見されます。

 この場面では、磯野家の月の収入合計は「1,260,000」となっていました。さらに、カツオが意味を分かっているとは思えませんが、マスオさんの月収の下には「株式配当143,506」の記述もあります。カツオは家計簿の空白がもったいなくて書いたとのことで、家計簿をさぼったサザエさんとカツオの両方が叱られることとなりました。ちなみに、波平はたまたま見かけた良い釣り竿を買いたくて家計簿を覗いたと語っており、さすがに欲しいものを気軽に買えるような収入ではないようです。

 このエピソードを見る限り、磯野家の収入はもっと低いようですが、実際のところの給与はどれくらいのものなのでしょうか。長谷川町子先生の原作マンガの方の描写には、いくつか彼らの収入が分かるエピソードがあります。

 波平は1965年12月16日掲載のエピソード(朝日出版社版のコミックス47巻収録)で、酔っ払った際に家で待っていたフネとサザエを警察官と勘違いして、「いその波平 五十四歳 月給税込み七万円であります ハイ」と答えています。また、マスオさんも朝日出版社版の45巻に収録されている1965年2月26日記載のエピソードで、公園のベンチでタバコをくれた男性に月給が手取りで3万4000円であることをぼやいていました。

 これらのエピソードの掲載時期である、1965(昭和40)年の平均月給を見てみましょう。労働省(当時)による、「昭和40年賃金構造基本調査結果報告書」に記載された当時の「平均きまって支給する給与額」は、全労働者では平均2万7300円、波平が該当する「50~59歳の男性」は平均4万2600円、マスオさんが該当する「25歳から29歳の男性」は平均2万8600円となっています。

 計算してみると、波平は当時の同年代男性の約1.64倍、マスオさんは手取りで3万4000円なので総支給額は不明ですが、単純計算では同年代平均の約1.19倍の給与をもらっていました。厚生労働省の調査では、2022年の50歳から54歳男性の平均月給は約36万4000円、25歳から29歳の男性は平均で25万1000円です。単純計算で掛け合わせると、波平は現代では「36万4000円×1.64」で59万6960円、マスオさんは「25万1000円×1.19」で29万8600円の月収があることになります。

 そして、波平はボーナス2.56か月分なら年収約869万円、マスオさんは約434万円となりました。世帯年収では約1300万円となります。子供が3人もおり、そこまでの贅沢はできないでしょうが、7人+猫1匹が余裕をもって暮らせる収入があるのは間違いありません。

(マグミクス編集部)

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