「サイコパス」「怪物」と呼ばれた少年“堀川くん”にはモデルがいた!『サザエさん』
『サザエさん』の人気者・堀川くんにはモデルがいるそうです。はたしてどんな人物なのでしょうか?
堀川くんの奇行の数々を見よ

アニメ『サザエさん』に登場する「ワカメちゃん」のクラスメイト、「堀川くん」は数々の奇行によって人気者になりました。「国民的アニメが生んだ怪物」とも言われています。
脇役のわりに名前を冠したエピソードが多いのも特徴的です。「ワカメとホリカワくん」では、将来漫才師になりたい堀川くんが相方にワカメの兄「カツオ」を指名して口説き落とそうとします。目立つことは嫌いだと断ったカツオは「学者にでもなろうかと思ってる」と口から出まかせを言いますが、堀川くんは「僕をお兄さんの助手にしてください」と食い下がります。もはや何が目的か分かりません。
「ああホリカワくん」では、堀川くんがピンポンダッシュの犯人だと判明しますが、なぜかカツオが逃げ方のコーチをすることになるという不思議な展開を見せます。「ホリカワくんの弟」では、壁の染みに「ヘイキチ」と名付けて弟として扱い、ときどきキャッチボールしていることを作文で発表していました。
有名なのは「ホリカワくんの卵」です。堀川くんが磯野家に卵を持ってきて、卵かけご飯で食べるよう執拗に迫るところから始まります。堀川くんはもらったヒヨコに「わかめ」と名付けて、「ヒヨコのわかめが卵を産んだら真っ先に人間のワカメちゃんに食べてもらう」と宣言していました。
なお、堀川くんの初登場は古く、1971年の「あ~んと拝見」です。堀川くんの抜けた乳歯をワカメが家の縁の下に捨てようとしますが、それを見たサザエは「縁の下ってルンペンごっこでもするの?」と言い放っていました。時代を感じるセリフです。
これらのエピソードは、いずれも脚本を雪室俊一さんが担当しています。「堀川くん」という名前をつけたのも雪室さんです。堀川くんは雪室さんが作り上げたオリジナルキャラクターと言っても過言ではありません。ちなみに雪室さんは「イクラ」「中島」「花沢」の名付け親でもあります。
雪室さんによると、堀川くんのモデルは、雪室さんがシナリオライターになるきっかけを作った高校時代の友人なのだそうです。友人の名字が「堀川」でした。
雪室さんは高校の頃、小説を書いていましたが、クラスメイトの堀川くんもいつも授業中にシナリオを書いていました。雪室さんは自分でも試しにシナリオを書いてみたところ、堀川くんに「僕よりうまいよ」と言われて、そこからシナリオを書き始めるようになったのです。ただ、堀川くんは自分がモデルになっていることは知らないとのことでした。
雪室さんはキャラクターの堀川くんについて「とっても純粋な子なんです」と言います。
「彼の一見不思議な行動はいろいろ言われたりもしているみたいですが、なんにでも興味を持って、いろいろな目線で物事を見ることのできる子なんですよね。モデルにした僕の友人の堀川もそんなやつです」(『サザエさんヒストリーブック 1969-2019』扶桑社)
雪室さんは堀川くんが「いろいろ言われたりしている」ことを知っているようです。堀川くんへの深い愛情も伝わってきます。
最近は雪室さんの担当回以外でも堀川くんの活躍が見られるようになりつつあります。今後も『サザエさん』の名物キャラクターとして、まわりの目など気にせず、のびのびと暴れ回ってほしいものです。
(大山くまお)