実写化ならではの演出に絶賛の声も? 再現度高い「短いマンガ」原作映画
長期連載されたマンガの実写化は、原作からどうしても削らないといけない部分が出てきます。一方で、2巻以内で完結した短いマンガを実写化し、高い再現度で評価された映画もありました。
ほのぼのとした雰囲気も原作どおり
長編マンガ作品の実写版は、映画化はもちろんドラマ化でも上映時間、放送枠の都合で重要な場面がカットされることもあります。一方で、2巻以内で完結した短いマンガを丁寧に再現した作品もありました。そうした、好評だった「短いマンガ」の実写映画を振り返ります。
●『森山中教習所』(原作:真造圭伍)
映画『森山中教習所』は、田舎を舞台に無認可の教習所へ通う大学生とヤクザの組員とのひと夏を描いた1巻完結の同題マンガを、2016年に実写化したものです。能天気な大学生の「清高」(演:野村周平)と、クールなヤクザの「轟木」(演:賀来賢人)という、高校の同級生で正反対なふたりを中心に、ゆるやかな人間ドラマが描かれます。
普段の生活では交わることのないふたりが、教習所で「免許を取る」という共通の目的をもち、友情を深めていく姿が本作品の見どころです。また、清高が教官の「サキ」(演:麻生久美子)に恋心を抱くなどの恋愛要素もあり、キャストの細やかな表情や動きの変化とともに物語が淡々と流れます。ロケ地である栃木県の、のどかな情景も相まって、ほのぼのとした原作の世界観がしっかり表現されていました。
免許を取ったら再び会うことのない人たちとの一期一会の出会いや、そこにしか生まれないドラマが丁寧に描かれ、「もう二度と帰ってこない時間を思い出す切ない作品」「ただのゆるい話と思いきや、想像以上にストーリーが出来上がっていた」と、好評の声が多く挙がりました。
●『ミスミソウ』(原作:押切蓮介)
2018年に公開された映画『ミスミソウ』は、転校先でクラスメイトから壮絶ないじめにあった挙句、家族を殺害されてしまった「野咲春花」(演:山田杏奈)が、己の命をかけて凄惨な復讐劇を繰り広げるという物語です。同題の原作マンガは2巻完結で、殺戮に身を投じていく春花やクラスメイトの心の闇、壮絶なクライマックスまでが、トラウマ級の描写の数々とともに描かれています。
目を釘で刺されたり、鼻を潰されたりと容赦ないスプラッターなシーンが再現されており、映画初主演の山田杏奈さんの名演も相まって、原作に負けない迫力を生み出しています。また、春花の唯一の心の支えであった「相場晄(みつる)」を演じる清水尋也さんも、暴力的な本性をもつ二面性のあるキャラクターを実在感たっぷりに演じていました。
さらに、雪景色の「白」と、血や春花が着用するマフラーやコートの「赤」のコントラストが原作の世界観をより引き立てている点も、映画ならではの見どころです。物語が進むごとに春花の衣装に赤いアイテムが増えていくのは内藤瑛亮監督の演出によるもので、それにより彼女の内面の変化を表していました。ネット上では「救いようがなくて胸糞な感じが原作に忠実」「グロすぎて見ていられなかった」という声も挙がっています。
また、あるキャラの顛末が原作と違っており、「最後にさわやかな感動があった」「ある種原作より残酷」とさまざまな反応を呼びました。