マグミクス | manga * anime * game

『北斗の拳』ユリアはなぜ漢達の命を散らしてまで「最後の将」として動いたのか?

核戦争後の世界で、超人的な拳法家が争うマンガ『北斗の拳』。ヒロインのユリアも「南斗聖拳最後の将」として登場します。拳法家ではなさそうなユリアがなぜ南斗聖拳を束ねようとしたのか、考察していきます。

将なのに南斗の拳法家に認知されていない?

本編では運命に翻弄された印象の「ユリア」は、「南斗最後の将」として何がしたかったのか。画像は『北斗の拳』新装版 第9巻(コアミックス) (C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983
本編では運命に翻弄された印象の「ユリア」は、「南斗最後の将」として何がしたかったのか。画像は『北斗の拳』新装版 第9巻(コアミックス) (C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983

 マンガ『北斗の拳』(原作:武論尊/漫画:原哲夫)は、核戦争が起こり、文明が荒廃して暴力が支配する世界で、力で世界を統治しようとする拳法家同士が争う格闘マンガです。

 主人公「ケンシロウ」が使う一子相伝の暗殺拳「北斗神拳」には、対となる「南斗聖拳」が存在します。こちらは、核戦争前は1000以上流派があり、核戦争後でも108の流派が存在したということで、結構、使い手が存在します。

 中心となるのは、天の宿命の星である「宿星」を持ち、南斗聖拳108派を統べる「南斗六聖拳」で、その六聖拳の「最後の将」を守る存在として「南斗五車星」があります。前者には「サウザー」「レイ」らが名を連ね、後者には「フドウ」などがおり、劇中でも屈指の拳法家揃いです。

 その中で、唯一「拳法家ではないのに南斗六聖拳」な人物がいます。ケンシロウの恋人で、後に「南斗六聖拳最後の将」として登場する「ユリア」です。

 ユリアは「南斗正当血統」で、かつ「慈母星」の宿星を持ちますが、拳法の使い手ではありません。ほかの拳法は命を奪う力ですが、ユリアの力は真逆であり、「自分以外の」未来を予知する「天の声」と、手をかざすことで傷を癒す「癒し」の力です(幼少期のラオウが癒しの力で救われています)。原作者も「ユリアの力は拳法ではなく、相手の心身を癒すもの」と解説しています。

 南斗正当血統とは、重大かつ火急に成すべき事態が生じた時に「南斗」と「北斗」を一体化できる力を持つものが継承する星で、それまでは「北斗」に縁を持つ女性が継承してきたようです。

 ただ、ユリアは「南斗聖拳最後の将」として育てられた人物ではありません。アニメ『真 救世主伝説 北斗の拳 ユリア伝』が公式であるなら、幼女であった核戦争前から南斗聖拳関係者であるダーマに庇護され、ほどなく北斗神拳継承者「リュウケン」の元に預けられて成長しています。ダーマは「北斗と南斗が結ばれる時に奇跡が起こる」という伝承を知っていたので、南斗正当血統のユリアを、意図してリュウケンに預けたのでしょう。

 なおマンガ『北斗の拳 ユリア外伝 慈母の星』では、ユリアが成人してから核戦争が起こっています。この記事では『真 救世主伝説 北斗の拳 ユリア伝』の設定を基にして書いています。

 リュウケンの元で成長した際に、北斗神拳の伝承者候補だったケンシロウほか「トキ」「ラオウ」「ジャギ」だけでなく、フドウや「ジュウザ」など、南斗聖拳関係者とも接点を持っています。

 しかし、幼少期において、ユリアを南斗聖拳関係者だと見なすものはいませんでした。大人になっても南斗六聖拳のひとりである「シン」は、ユリアを愛する女性として扱いはしたものの、六聖拳の将として立てるようなことは一切ありません。ユリアは「南斗正統血統」でもあるのですが、シンは五車星の面々に聞かされるまでそのことも知らなかったようです。

 それどころか、南斗の将を守る南斗五車星のひとりである「雲のジュウザ」でさえ、ユリアが最後の将だとは知りませんでした(これはジュウザが五車星の宿命など何とも思わず、自由気ままに生きていたからではありますが)。

 ユリアの正体を知っていたのは、ダーマを除けば五車星である「海のリハク」とその娘の「トウ」、「風のヒューイ」「炎のシュレン」だけでした。なぜ南斗聖拳の頂点に立つユリアを、南斗聖拳関係者は認知していないのでしょうか。そして彼女は将として何がしたかったのでしょうか。

【画像】こちらがラオウの恋したユリア(幼女)です

画像ギャラリー

1 2