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「蛮族の武器」こと「ガンダムハンマー」 連邦はなぜこのようなものを作ったのか?

「ガンダム」といえばリアルロボット路線の雄ではありますが、一方で黎明期だったこともあり、少々、説明の難しい描写や武器なども見られます。「ガンダムハンマー」も、そうしたガジェットのひとつでしょう。

「ガンダムハンマー」は「ロマン武器」か?

スーパーロボット路線のような武器、ではある。「MG 1/100 RX-78-2ガンダムVer.3.0用 拡張セット」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
スーパーロボット路線のような武器、ではある。「MG 1/100 RX-78-2ガンダムVer.3.0用 拡張セット」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 TVアニメ『機動戦士ガンダム』に登場した「ガンダム」の武器のひとつ、「ガンダムハンマー」は、現在のリアルロボット路線から眺めると、少々、その枠の外にあるように見えるかもしれません。

 ところが、そのモデルとなった武器が現存します。「モーニングスター」という武器で、棘付き鉄球を柄頭に据えた棍棒の一種です。柄と鉄球の間を鎖でつないだ形状の打撃武器も、同じくモーニングスターと呼ばれています(ただし、これについてはただの美術品という説もあります)。その意味ではガンダムハンマーも、実はリアル路線のガジェットだった、といえるかもしれません。

 アニメでは第5話「大気圏突入」で初登場しました。タイトルどおり、「ホワイトベース」の一行が大気圏へ突入する間際、「シャア・アズナブル」率いるモビルスーツ(MS)「ザクII」の部隊がこれを襲撃します。「アムロ・レイ」の搭乗するガンダムが迎撃にあたり、そのなかでホワイトベースへ追加の武器を要請し、そして「ガンダムハンマー」は出番を迎えました。

 ただ、その扱いは決して良いものではなかったようです。要請にブリッジで応じた「セイラ・マス」は「ガンダムハンマー『しか』」出せない、といった表現をし、そしてアムロも「それでいいです」と返しています。あまり頼りになる武器という認識ではない様子です。とはいえアムロおよびガンダムはこれを活用し、獅子奮迅の戦いを繰り広げ、シャアたちからホワイトベースを守ることに成功しました。なおガンダムハンマーは最後、柄ごとシャアのザクIIに投げつけられ(そしてかわされ)、おそらくそのままデブリ(宇宙ゴミ)となったと見られます。

 ここで、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。ガンダムハンマーはいわゆる質量武器といわれるもので、その鉄球にはMSの破壊に足る相応の質量があると見られます。実際、振り回した鉄球がザクIIのボディ部分に当たり、これを破壊していました。

 そのようなものを「単純に」宇宙空間で振り回した場合、反作用の力で、ガンダム自身もかなり動くことになります。ブンブン振り回せば、ガンダムもグリングリン回転することになるのです。地に足をつけた状態でなければ、鉄球の威力もほとんど殺されてしまうはずで、つまり本来、宇宙空間ではとても使える武器ではないはずなのです。

 これを「使える」ようにする場合、すなわち、スラスターなどでガンダム自身を動かないようにする(反作用をすべて抑制する)となると、かなり高度な姿勢制御技術が必要となるでしょう。果たしてこの第5話当時、連邦のMSに関する技術はそこまで熟成されていたでしょうか。少なくとも、悲鳴嶼さん(『鬼滅の刃』岩柱。得物はガンダムハンマー、のようなもの)のような戦いは到底、無理でしょう。

 つまり第5話の時点では、実はハンマーの使用に相当、制限がかかっていた(単純な動きしかできない、等)可能性が考えられます。そのような武器であの戦闘を切り抜けたアムロはやはり、只者ではありません。

【画像】「さすがゴッグだ!」こちらが「ハイパーハンマー」敗北の瞬間です

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