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スーファミ『弟切草』が与えた影響 『快傑ズバット』脚本・長坂氏の借金がきっかけ?

シナリオは『快傑ズバット』などの長坂秀佳氏

筆者所有の『快傑ズバット』レーザーディスクVol.1
筆者所有の『快傑ズバット』レーザーディスクVol.1

『弟切草』の自由闊達なシナリオを執筆したのは、脚本家・小説家として偉大な実績を持つ長坂秀佳氏でした。長坂氏の代表作を挙げれば、『特捜最前線』『人造人間キカイダー』『快傑ズバット』などキリがありません。

 ですが『弟切草』の開発に参加した時期の長坂氏は、困難な状況に直面していました。1988年に放送されたTVドラマ『華の嵐』に参加していた長坂氏は全70話中11話を書いた時点で意見対立から降板してしまいます。時間が空いた長坂氏は栄誉ある江戸川乱歩賞に挑戦すべく脚本業を休業し、3000万円の借金をして生活費に充て、小説を書き始めたのです。

 このとき執筆された『浅草エノケン一座の嵐』は見事に第35回江戸川乱歩賞に輝くのですが、選考委員たちとのトラブルや、想像していたよりも収入が少なかったなどの理由から、窮地に追い込まれてしまいます。

 腕はあるのに、まとまった依頼がない状況の長坂氏のもとに持ち込まれたのが、『弟切草』のシナリオライティングの仕事でした。ゲームのシナリオ執筆経験はない長坂氏でしたがこれを引き受け、媒体の違いなどものともしない実力の高さで膨大なシナリオを書き上げました。

 もし長坂氏が『華の嵐』を降板していなかったら、借金をしていなかったら、小説の収入が十分だったら『弟切草』は生まれていなかったか、別の形になっていたでしょう。

 1990年代半ば以降、『弟切草』に影響を受けたクリエイターたちが、多くのサウンドノベルを生みだしていきます。Leafの『雫』『痕』『To Heart』は1990年代後半に熱狂を引き起こし、メインライターを務めていた髙橋龍也氏は現在アニメの脚本家として『アイドルマスターシンデレラガールズ』などさまざまな作品を手掛けています。

 そして2000年代にはTYPE-MOONの奈須きのこ氏の手により、『月姫』『Fate/stay night』という傑作サウンドノベルが誕生します。特に『Fate』シリーズは多数の派生作品を生み出し、現在ではスマホアプリ『Fate/Grand order』が極めて大きな存在感を発揮しています。

 これらすべての始まりは『弟切草』だったのです。偉大なるゲームを生み出してくれた中村氏とチュンソフトのスタッフの方々、長坂氏に感謝の念を捧げたいと思います。

(早川清一朗)

【画像】『弟切草』に始まった、サウンドノベルゲーム

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