50周年『フランダースの犬』OP曲「ランランラ~」のあとの歌詞の意味は? 知って観ると面白いトリビア
ただただ不幸な物語に、感動?

●アニメと原作の違い
原作は短編の児童小説で、アニメは悲劇的でかわいそうな主人公という物語の大筋は変えずに、オリジナルのエピソードを追加しています。設定も、視聴ターゲットとなる子供の年齢に合わせて変更していました。ざっと挙げると……。
・アニメの主人公「ネロ・ダース」の年齢は8歳ですが、原作は15歳(名前はニコラス・ダース)。アニメのアロアは7歳ですが、原作は12歳でした。
・原作は年齢がやや高いためふたりの恋愛感情も多少描かれていますが、アニメでもアロアの父(バース・コゼツ)がネロを毛嫌いしたのは、原作のネロが貧乏なくせにイケメンだったので、思春期の娘との関係を良く思わなかったからです。
・パトラッシュは、アニメでは、ネロが8歳のときに金物屋でこき使われていた老犬を「ジェハンじいさん」が金銭で引き取り、じいさんはその1年後、ともに天国へ旅立ちます。原作では、ネロが2歳頃に金物屋に捨てられた老犬を拾い、それから15歳時まで一緒に暮らしたことになります。
・ジェハンじいさんは、アニメでは第44話で亡くなります。80歳以上でしたが、数か月前まで元気に働いていました。原作では、84歳のときリウマチで歩けなくなっています。そのため、6歳のネロがパトラッシュと牛乳運びの仕事を始めました。
・ネロがコンクールに提出した絵は、アニメでは「おじいさんとパトラッシュ」の絵ですが、原作では「木こりの絵」です。
・アニメの最終回では、大聖堂でネロとパトラッシュが力尽き、天使たちに導かれて天国へ召されるというラストシーンで終わります。原作では、翌日、ネロがパトラッシュを強く抱きしめたまま亡くなっていて引き離せないため、村人たちがそのままふたりを埋葬するというラストで終わっていました。
●何を言いたい作品だったのか
同じことを言う人が大勢いる部分ですが、「児童書『フランダースの犬』を通して、作者は何が言いたかったのか?」、これが謎として残ります。とにかく、この物語には「救い」がありません。ただの不幸で終わるのです。
貧しいながらも真面目で誠実な少年が、家族を失い、放火犯の濡れ衣を着せられて仕事も家も失い、最後に賭けた絵のコンクールにも落選して夢もついえ、不幸の連鎖の末に路頭に迷います。その後、知らないところで絵の才能を認められ希望の光が射し、さらに放火の誤解も解けたにも関わらず、少年は死んでしまうのです。
「福祉施設の充実を訴えている」「困難に立ち向かう勇気を持つこと」「純粋な心と人を思いやる心の大切さ」などなど、作品にはこんなメッセージがあるという人もいます。感じることは人ぞれぞれでしょうが、改めてあなたは『フランダースの犬』からどんな教訓を得ましたか。筆者は、「明日があるさ」です。
(石原久稔)