興収伸び悩み、賛否バックリの実写『アンダーニンジャ』 賛派の「福田雄一作品のなかではマシ」意見は本当か?
「しつこいギャグ」は『アンダーニンジャ』と合わない?

●福田監督らしいギャグとの「食い合わせの悪さ」が大問題
一方で、「監督の我が出すぎちゃってる」「多少は福田雄一監督に耐性がある自分でも無理だった」などと、やはり福田監督らしさがノイズという酷評が多いのも事実です。今回はギャグも「しつこさ」「長さ」込みのものが多く、それが意図的にせよテンポを削いでいる、はっきりいうと「邪魔」に感じてしまう人も多いのではないでしょうか。
たとえば、序盤のムロツヨシさん演じる「大野」と九郎の、ふすまでの「え?」の応酬は原作のシチュエーションを膨らましたもので、これには少し笑ってしまいました。しかし、さっぱり意味も面白さも分からなかったのが、浜辺美波さん演じる「野口彩花」が、九郎に「鼻くそ、顔についてるぞ」と言われ、「どこどこ?」と自分の顔を「ピョコピョコピョコ」と、効果音とともに手でペチペチ叩くギャグです。クライマックスではこれが伏線のように使われるのですが、とても上手い演出だとは思えません。
他の場面でも、キャラが気絶すると「チーン」と鳴ったり、走り去る場面で「ビューン」というSEが聞こえたりもします。言うまでもなく、佐藤二朗さんは「いつもの福田作品の佐藤二朗さん」的なふざけ方ですし、そうしたコントのような演出は個人的には軒並み滑っているように思えました。
また、原作のシチュエーションを福田監督らしいギャグに変えた場面もあります。美人なのに誰も寄りつかない山田が鼻くそを食べる場面は、映画では「指の第二関節まで指を鼻に突っ込んで強引にほじる」という強烈なアレンジをされており、演じている山本千尋さんが気の毒に思ってしまった人もいるのではないでしょうか。
また、『アンダーニンジャ』の原作は青年誌に連載されており、残酷シーンもはっきりと描かれる大人向けの作品です。映画で残酷さをファミリー層に向けにマイルドに調整するのは納得できますし、G(全年齢)指定にしてはギリギリな流血や殺傷シーンをが描いていますが、劇中の「高校生たちが惨殺されている」シビアな状況と、「福田監督の現実ではあり得ないギャグ」は食い合わせが悪いですし、原作の「日常のなかで発露する狂気と隣り合わせのコミュニケーションのギャップによるおかしみ」のコメディ要素とは、終始ピントがずれてしまっていました。
総じて、映画『アンダーニンジャ』は「福田監督らしさ以外でたくさん良いところがある」から、好意的な感想が目立つようになったといえそうです。ただ、やはり「福田監督と原作が合ってない」、はっきり「監督の人選ミス」という結論にたどり着かざるを得ない面もあり、それが大きく評価、そして興行にも少なからず影響していると思います。
とはいえ、笑いのツボは千差万別であり、上記のギャグも楽しめたという人もいるでしょうし、ギャグの割合そのものが少ないため、これまでの福田監督作品が苦手な人でも楽しめる可能性もあります。また、原作からパロディ的なギャグが多かった『銀魂』など、福田監督との相性の良い原作もあるので、その方向で多くの人に受け入れられる作品が生まれることを、わずかながら期待してはいます。
※山崎賢人さんの「崎」は「たつさき」が正式表記
(ヒナタカ)