なぜ人気キャラは権利切れ後ホラー化されるのか? 『マッド・マウス』監督&プロデューサーインタビュー
ホラー映画『マッド・マウス ~ミッキーとミニー~』は、どのように原典『蒸気船ウィリー』にリスペクトを捧げたのでしょうか? 監督&プロデューサーへのインタビューをお届けします。
「キャラクター」の著作権にひっかからないための工夫も

2025年3月7日(金)より、映画『マッド・マウス ~ミッキーとミニー~』が日本で劇場公開されます。本作は、誰もが知るあの「ミッキーマウス」のデビュー作とされる短編アニメ『蒸気船ウィリー』(1928年)の、アメリカでの著作権保護期間が2023年末で終了したことを受け、そのミッキーを凶悪な殺人鬼として描いたホラー映画です。
このたび、来日したジェイミー・ベイリー監督と、脚本と製作を手がけ出演もしているサイモン・フィリップスさんへのインタビューをお届けします。この挑戦的すぎる試みと企画にどう向き合ったのか、読めばきっとお分かりいただけるでしょう。
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●「とあるパロディ」から始まる理由は?
――まず、映画の「始まり方」が最高で爆笑しました。ネタバレだと思うので、具体的にどういう演出であるかは書かないでおきますが、本編の前に多くの人がここで「観に来て良かった!」と感じると信じています。
ジェイミー・ベイリー監督(以下、ジェイミー) ありがとう。実はここで「免責事項」を載せることが必要だったんだ。でも、それをただ載せるだけだと面白くないし、ただ言い訳を並べるだけならシラケちゃうよね。だから、いまディズニーの傘下にある、あの有名作品のパロディをしたんだ。だって、みんな思っているでしょ? 「ディズニーに訴えられたらどうするんだよ」って。その不安に答えて、しかも笑ってもらうための、一挙両得のアイデアなんだ。
――なるほど。あれは作品の「決意表明」だけでなく、「法的に問題がないか」をしっかり定めて主張する場でもあったんですね。
ジェイミー そうだね。ただ、ちょっと心残りなのは、日曜の夜にワインを飲みながら初めて書いたバージョンでは、もっと攻めてて面白いことが書いてあったんだよ。「Fワード」とか「ピクサー」もね。でも弁護士から「それはまずい」と止められて、あれくらいに落ち着いたんだ。
――この冒頭は、「ああ、こういう作品なんだ」と、観る人が映画本編の「心がまえ」ができる仕掛けでもあると思いましたし、あそこで掲げられた精神が貫かれている作品だとも感じました。
ジェイミー それもそうだね! なんだかバカげたことが、この後に起こるんだって分かるだろ?
●原典の本編映像も出しているけど、白黒にしないと……
――さらに劇中では『蒸気船ウィリー』の有名な口笛のメロディが流れたり、『蒸気船ウィリー』の本編映像までもが最初のクレジットで映されたりもします。始まり方もそうですが、「攻めた」「遠慮しなかった」という意識はあったのでしょうか。
サイモン・フィリップスさん(以下、サイモン) せっかくパブリック・ドメインになっているんだから、その原典をちゃんと出しておきたかったんだよね。その上で、『蒸気船ウィリー』が劇中の殺人鬼に「憑依」するように見せたかったんだ。
ジェイミー 付け加えると、映画はカラーだけど、劇中の殺人鬼のミッキーは白黒にしているのにも理由があるんだ。たとえば赤いズボンに白い手袋という組み合わせだと、ミッキーという「キャラクター」の著作権に引っかかっちゃうんだよ。しかも、まゆ毛がないミッキーにもしているんだ。そこはとても大事だね。
●実は日本独自のバージョンだった
――ゲームセンターという舞台ならではの、ギミックが面白かったですね。ロケーションに選んだ理由は、やはり某「夢の国」のように「楽しく遊べる場所」だからでしょうか。
ジェイミー その通りだよ。ゲームセンターは大人も、劇中の若者たちも遊べる場所でもあるし、「本来は安全なところ」が殺人の現場になってしまうギャップもいいよね。
――そのゲームセンター内での戦いだけでなく、『悪魔のいけにえ』のように若者たちが屋外外で殺されていくパートもありましたよね。ふたつの軸で物語を進めた理由について教えてください。
ジェイミー 実は皆さんが日本で観るのは日本独自のバージョンで、あの森のなかの一軒家のパートは追加で撮影したんだよ。ほかの場面を7分削って、20分足しているんだよね。おかげでよりつじつまが合うようにできたし、殺人鬼にとある特殊な能力があることも示している。何より、もうひとつ「ホラーのお決まりのシチュエーション」をサービスとして取り入れたって感じだね。


