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実は「名犬」にならず終了? アニメ『名犬ラッシー』知られざる最終回の実態

「世界名作劇場」を彩る作品のひとつに『名犬ラッシー』があります。離れ離れになってしまった飼い主の元へ帰るため、犬のラッシーが過酷な旅に出る感動の物語です。しかし「世界名作劇場」シリーズとして放送されたアニメ版では、ラッシーの長い旅がたった2話で終了していました。

たった2話で終了したラッシーの旅

画像は「世界名作劇場・完結版 名犬ラッシー」(バンダイビジュアル) (C)NIPPON ANIMATION CO., LTD.“Lassie” (C)Classic Media, Inc. LASSIE is a registered trademark of Classic Media, Inc. All rights reserved.
画像は「世界名作劇場・完結版 名犬ラッシー」(バンダイビジュアル) (C)NIPPON ANIMATION CO., LTD.“Lassie” (C)Classic Media, Inc. LASSIE is a registered trademark of Classic Media, Inc. All rights reserved.

 かつてフジテレビ系列で放送されていた「世界名作劇場」を覚えていますか? 同シリーズはアニメを通じて、世界中の名作文学に触れる機会を日本の子供たちに与えてくれました。『名犬ラッシー』も、そのうちのひとつです。

 少年と犬の友情を描いた不朽の名作として有名ですが、アニメ終盤の展開は意外と知られていないかもしれません。

『名犬ラッシー』は1996年1月、「世界名作劇場」22番目の作品として放送をスタートしました。原作となっているのは、イギリス出身の作家エリック・ナイト氏の小説です。イギリスの小さな炭鉱町を舞台に、9歳の少年「ジョン・キャラクロー」とコリー犬「ラッシー」の絆を描いた物語でした。

 炭鉱町を支えていた「ウェリントン炭坑」では年々石炭の出が悪くなってきており、ジョンは9歳ながら、炭鉱主である「ラドリング公爵」に炭鉱を閉山しないよう直訴することとなります。

 タイトルこそ有名ですが、実のところ視聴率はあまり芳しくありませんでした。それが原因なのか、主に4クールでの放送が多かった「世界名作劇場」シリーズのなかで『名犬ラッシー』はわずか2クールで終了しています。

 しかもアニメ版はジョンとラッシーの生活を描いたオリジナルエピソードがほとんどで、本来のテーマであるラッシーの旅はたった数話でしか描かれていません。

 ふたりが離れ離れになったのは、最終回を目前に控えた第23話「頑張れジョン・ラッシーを守れ!」でのことです。閉山を考え直してもらう交換条件としてラドリング公爵に預けられたラッシーは、そのままスコットランドに連れて行かれてしまいます。そして第24話「消息不明・ラッシーを捜せ!」にてラッシーが公爵邸を脱走、炭鉱町を目指して旅に出るという流れでした。

 その結果、TV放送の最終回となった第25話「お帰り ラッシー」では、ジョンがたった2話前に別れたばかりのラッシーと再会します。果たしてこれは感動していいのかどうか、思わず困惑してしまった人も多いのではないでしょうか。

 ちなみに炭鉱は再調査の結果、まだ石炭が眠っている可能性が高いことが分かり、閉山は取りやめに。物語はまごうことなきハッピーエンドで幕を閉じます。

 実はもともと本作には、エピローグにあたる第26話が存在していました。こちらはきちんと制作も終わっていたのですが、野球中継が雨天中止になった場合のみ放送するという、いわゆる「雨傘番組」の扱いとなってしまいます。結局野球は予定通り行われたため、26話はTVで放送されていません。

 第26話「夢に向って走れ!」では、遠く離れたスコットランドから主人の元へ帰って来たラッシーの話が、ラドリング公爵の口を通じて新聞に載ることとなります。この話はまたたく間にイギリス中に広まり、ラッシーは「名犬ラッシー」として有名になるのでした。

 タイトル回収ともいえる展開もあっただけに、TVで追いかけていた視聴者が26話を見られなかったのは非常に残念なことです。なおDVDなどのソフトには幻の26話も収録されているため、彼らの物語を最後まで見届けたい人は、ぜひチェックしてみてください。

(ハララ書房)

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