リアルになりすぎたキャラも? 美点もあるのに「失敗・炎上」しちゃったゲーム原作映画
2025年4月25日(金)日本公開の『マインクラフト』の映画が大成功を収めているいま、失敗してしまったゲーム原作の映画を振り返ってみます。成功できなかった要因もありつつ、いずれも素直に評価できるポイントが、たくさんあると思うのです。
「黒歴史」にしてしまうのはもったいない

2023年の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』、日本で2025年4月25日公開の『マインクラフト・ザ・ムービー』など、大成功したゲーム原作の映画がある一方で、興行もしくは批評的に大失敗してしまった作品も少なくはありません。それぞれに「フォローしたくなる」魅力があったことも含めて、振り返りましょう。
●『ファイナルファンタジー』(2001年)
2001年公開の『ファイナルファンタジー』は、制作費1億3700万ドルに対し、全世界での興行収入は8513万ドルという、興行的に歴史的な大失敗をした作品です。評価も「『ファイナルファンタジー』らしさがほとんどない」ことを筆頭に、かなり不評でした。
何しろ「滅亡間近の世界を舞台にしたSF」であり、ゲームでおなじみの「魔法」や「クリスタル」や「チョコボ」などが、ほとんど登場しないのです。世界観や敵となる存在の設定が難解で納得しにくく、会話シーンも冗長に感じてしまいますし、キャラ描写もどこか類型的で、アクション映画としてのカタルシスが欠けていることも問題でした。
反面、見どころとなるのはやはり美しく革新的な映像です。坂口博信さんが監督を務め、ハリウッドとタッグを組み、当時の最新の技術が注ぎ込まれた3DCGは、動きにやや、ぎこちなさや不自然さも感じるものの、荒廃した世界ではその「無機質さ」もマッチしているようにも思えます。
同作は2025年3Dの新潟国際アニメーション映画祭で再上映され、運営者は「アニメーションCGにおける歴史の転換点が存在するなら、本作こそがそのひとつです」「その野心的な試みはその後、日本だけでなく世界のアニメーション、ゲーム技術に大きな影響を及ぼしました」というコメントも寄せていました。
なお、2005年に発売された3DCGの映像作品『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』はゲームの2年後の世界を描く続編で、こちらはDVDなどメディア媒体での販売に絞った結果、全世界累計出荷本数は410万枚という記録を打ち立てており、内容もダイナミックなアクションやキャラクター描写が高く評価されています。映画の失敗から、商法や作風を大きく変えたからこその成功と言えるでしょう。
●『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』(2019年)
人気シリーズの5作目『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』を映画化した本作は、日本での興行収入は14.2億円となかなかのヒットをしましたが、公開直後からSNSで激烈な酷評がたくさん届いてしまいました。ここでは詳細は伏せておきますが、「ゲームの世界に没入していたのに冷めてしまう」「良いことを言っているようで、上から目線かつ野暮な説教をしてしまう」ようなメタフィクション的構造が、ファンを中心に怒りを買ってしまったのです。
総監督を手がけた山崎貴さんは、まんたんウェブのインタビューにて、オファーがあった当初「ゲームと映画は相性が良くない」と即答で断ったことを語っていました。その理由は「ゲームは体感時間が長くてインタラクティブだけど、映画は一方通行だし尺が限られている」という、真っ当ともいえるものでした。
ただ、その後に「劇場版アニメの成否をも左右するような、ラストシーンのあるアイデアを『思いついてしまった』」からこそ情が湧いたとも語っており、その試みが賛否を呼ぶことは折り込み済みだったのかもしれません。
とはいえ3DCGのクオリティーは高く、「陰影」をつけた表現にはこだわりを感じましたし、原作では2Dのドット絵だったゲームのキャラクターが、3Dで生き生きと動いていることにも感動があります。『ドラクエ5』での印象的なイベント「『ビアンカ』と『フローラ』のどちらと結婚するか」を、映像作品における表現としても、物語の流れとしても違和感がない、キャラクターの魅力や気持ちに真摯に向き合ったものに調整していたのも美点でしょう。
●『モンスターハンター』(2020年)
コロナ禍での公開延期および上映という逆境もあり、大ヒットゲーム『モンスターハンター』の実写版は、製作費6000万ドルに対して、全世界興行収入は4445万ドルと大失敗をしてしまいました。
内容は軍人たちが突如としてモンスターがはびこる世界に迷い込んでしまうという「異世界転移もの」で、あまりにも強いモンスターたちに軍人たちが次々とちぎっては投げられ、惨殺されるさまは映画『スターシップ・トゥルーパーズ』をほうふつとさせ、さらにトラウマ級のホラー映画と名高い『ミスト』にも似た恐怖シーンまでありました。
そして、主演のミラ・ジョヴォヴィッチさんとポール・W・S・アンダーソン監督という、ゲーム『バイオハザード』の夫婦コンビらしい、見せ場を次々打ち出していく点や、展開の「大味さ」もむしろ魅力(?)です。個人的な推しポイントは、「屈強なお姉さん」と「純粋かわいい青年」による「恋愛が一切からまない男女のバディムービー」になっている点で、言葉が通じないふたりが初めは衝突していても、しだいに「連携」していく姿も楽しく仕上がっていました。
ほかにもゲームではあれほど愛らしかった「アイルー」がマッチョな体格でかわいくなかったり、「ディアブロス」や「リオレウス」と戦うアクションは迫力抜群ながら「なぜ火属性の双剣という相性最悪の武器で戦うんだ」と思ってしまうツッコミどころも満載です。
ただ、個人的にはクライマックスのとある流れに一周回って大笑いできたので大好きですし、ジャンキーな味わいのモンスターバトル映画を求める方におすすめします。
●『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993年)
言わずと知れた『スーパーマリオブラザーズ』の実写映画『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』は、製作費4800万ドルに対して、北米の興行収入が2100万ドル、日本での配給収入は3億円と、こちらも言うまでもなく大惨敗でした。ゲームファンからの不評の理由のひとつが、「実写でリアルになりすぎたキャラクターと雑然とした世界観」です。
キノコがドロドロの「粘菌」だったり、「グンバ(クリボーの海外名)」の身体が大きいのに頭だけが異様に小さい見た目が怖かったり、「ヨッシー」に至っては原作の丸っこい造形が見る影もない「完全な恐竜」になっていたりと、ゲームファンが残念に思うのも納得のビジュアルでした。
とはいえ、そのキャラも世界観も見ていくうちに慣れていく、なんなら魅力的に見えてきます(マヒとも言う)し、「配管工の兄弟がさらわれたプリンセスを助けるために爬虫類系の怪物たちと戦う」という原作ゲームの流れを、忠実に再現しているといえなくもないです。ジェット噴射をする「ジャンプブーツ」を履いたり、前述した粘菌をトランポリン代わりにしたりと、「マリオといえば大ジャンプ」という「基本」もしっかりおさえていました。
マリオを演じたボブ・ホスキンスさんは後に「生涯最悪の映画」などと辛辣に振り返り、セットや小道具と整合性の取れない脚本に現場が大混乱してクッパ役のデニス・ホッパーさんが怒ったりした一方で、ルイージを演じたジョン・レグイザモさんは「僕の人生を変えてくれた」と感謝をしており、再上映時のパンフレットによると、旧Twitterで「私のヒーローだった」とファンに声をかけられたこともあったそうです。
「黒歴史」「失敗作」だと片付けてしまうのはあまりに惜しく、多種多様なアクションのギミックがたっぷりとある娯楽映画として掛け値なしに楽しいので、ぜひ見てみてほしい作品です。
(ヒナタカ)