あだち充『H2』の「意外と知らない」最終回 4人の恋模様の結末に「切ない」
あだち充さんのマンガ『H2(エイチツー)』は、単行本の累計発行部数が5500万部を超える人気作品で、1995年にはアニメ化もされています。しかし、意外と最終回を知らない、という人も多いのではないでしょうか。
切なくも味わい深いラスト

あだち充さんのマンガ『H2(エイチツー)』は、1992年から1999年まで「週刊少年サンデー」(小学館)にて連載され、単行本の累計発行部数5500万部超を誇る人気作品です。あだち先生にとっては、代表作『タッチ』以来となる長編野球マンガであり、1995年にはアニメ化、2005年には実写化もされました。そのアニメ版は原作と描かれる内容や演出に違いがあり、それぞれ異なる印象を与えています。
本作は、医者から「ガラスの肘」と診断されて一度は野球を離れた主人公「国見比呂」が、「千川高校」で仲間とともに野球愛好会を野球部へと昇格し、甲子園を目指して奮闘する姿を描いた青春ストーリーです。
中学時代の親友でありライバルでもある「橘英雄」は、名門「明和第一高校」に進学し、やがてふたりは野球の舞台で再び対峙することになります。また、比呂と英雄の幼なじみである「雨宮ひかり」、そして「千川高校」野球部のマネージャー「古賀春華」との恋愛模様も複雑に絡み合い、スポーツと青春、友情と恋が交錯する展開が、本作の大きな魅力です。
そんな本作の最終回はというと、アニメ版では比呂たちが高校2年生の春を終えたところまでしか描かれていません。最終話「夏への誓いここからスタート!」では、明和第一高校が春の選抜大会の出場を決めるもベスト4前で敗退し、英雄は夏にまた甲子園に戻ってくると決意を固めます。比呂も千川高校で甲子園に向け先輩たちとひたむきに練習する姿が描かれ、これからが本番という展開で放送が終了しました。
当時は原作もまだ完結していなかったため、アニメでは恋の決着などは描かれることなく、中途半端な結末に残念がる声も多く見られました。一方「あだち先生の作品のなかで一番わくわくして、恋愛関係も見どころが多かった」「割と原作通りの話が進んでいて見やすかった」といった好意的な意見も寄せられており、アニメ版を評価する視聴者も少なくありません。
原作マンガは単行本34巻で完結しており、終盤では甲子園で比呂と英雄の直接対決が描かれました。高校3年生の夏、北東京代表の千川高校と南東京代表の明和第一高校が準決勝でぶつかります。比呂のピッチングに手も足もでなかった明和第一高校は、最後のバッター英雄が三振に倒れ、2対0で千川高校が決勝進出を決めます。
この直接対決は、一見すると「勝ったほうがひかりを手にする」という恋愛の決着をかけた展開のようにも見えましたが、比呂はひかりの英雄への想いを最初から理解していました。だからこそ、勝てばひかりから選ばれると信じていた英雄を、比呂は対決を通じて、その思い込みを正したかったのです。その証拠に試合後のシーンでは、落ち込む英雄をひかりが励まし抱き合うことで、ふたりの絆が再確認できる描写があります。
一方で、甲子園決勝を控えた翌朝、比呂は折った紙飛行機を飛ばしながら、春華と未来の話を冗談まじりに未来像を語り合っていました。そして千川高校のバスが甲子園へ向かうシーンで今後のふたりの展開を示唆し、決勝戦を描くことなく物語は幕を閉じます。
本作の結末について読者からは「最後の夏まで描き、恋愛模様も抜かりなく描かれていて何度も読んでしまう」「野球以上にハラハラする四角関係が読み応えあった」といった声があがっており、野球マンガというだけではなく、奥深い恋愛ドラマとしても高い評価を得ています。
(LUIS FIELD)


