アニメ『みゆき』で描かれなかった原作の「結末」 声優に大ブーイングも?
1983年3月31日は、TVアニメ『みゆき』の放送が開始された日です。スポーツをからめることが多いあだち充作品のなかでは珍しく、恋愛に焦点を絞ったラブコメ作品です。『みゆき』は恋愛を中心軸にすえた作品として、当時のアニメのなかでは異彩を放っていました。
ふたりの「みゆき」の間で揺れ動く主人公
1983年3月31日、TVアニメ『みゆき』の放送が開始されました。原作はあだち充先生。スポーツをからめた人間模様が描かれることが多いあだち充作品のなかでは珍しく恋愛に焦点を絞ったラブコメ作品であり、主人公・若松真人が同級生の鹿島みゆきと血のつながらない妹である若松みゆきのふたりの間で揺れ動くさまが描かれました。
1970年代後半から80年代前半にかけて、かつては小さな子供向けとされていたTVアニメのなかに、ハイティーンをターゲットとした作品が増えつつありました。『みゆき』もその内のひとつです。
特に『みゆき』は恋愛を中心軸にすえた作品として、当時のアニメのなかでは異彩を放っています。1980年代前半には『超時空要塞マクロス』『ときめきトゥナイト』『キャッツ・アイ』など恋愛を重視した作品が複数登場しましたが、SF要素やファンタジー要素を含まず、なおかつ純粋に恋愛のみを追いかけた作品は、『みゆき』が最初期の作品となるようです。
監督(チーフディレクター)を務めたのは西久保瑞穂氏。タツノコプロで演出家として活躍し、押井守氏らと共に「タツノコ四天王」と呼ばれた人物です。西久保氏にとっては『みゆき』が初のシリーズ監督作品であり、鍛え抜かれた技量でまだアニメ業界全体として経験が少ない「恋愛の演出」を見事にこなし切りました。
本作は声優についても、ひと工夫が凝らされました。少年少女の恋愛を軸とするために、声優も若い年代の人物が配役されたのです。特にメインヒロインとなる若松みゆきにはまだ中学生の荻野目洋子さんが抜てきされ、清廉な声で初々しい演技を披露してくれました。しかし熱心な原作ファンからはブーイングが浴びせかけられていたそうで、後に荻野目さんはファンに対しお詫びしたいとのコメントを残しています。
インターネットがない時代、ファンが声優の演技に文句を付けるにはアニメ雑誌や新聞の読者欄への投稿など、相応の労力を必要とします。今となっては、『みゆき』が不満点に文句を付けたくなるほど注目度が高い作品だったことを示しているのは、皮肉と言えるかもしれません。