『銀河鉄道999』機械の体がタダって…秒で怪しまね? 鉄郎がハマった「詐欺の典型」
考えてみれば、「機械の体がタダでもらえる」という話を信じるのは、現代社会を生きる我々には少々、難しいでしょう。しかし劇場版『銀河鉄道999』の鉄郎が疑いを挟めなかったのも、仕方なかったのかもしれません。
鉄郎が信じてしまうのも無理からぬお話?

現代に生きる我々なら、「機械の体が無料でもらえます!」などという話を聞いた瞬間、「絶対詐欺でしょ」と疑うのではないでしょうか。特にネット社会に慣れ親しんだこんにちとなっては、無料をうたう怪しいサービスには警戒心を抱くのが当然です。
※以降、劇場版『銀河鉄道999』に関する重大なネタバレが含まれます。またTVアニメ版は展開が異なる点にご留意ください。
ところが劇場版『銀河鉄道999』の主人公である「星野鉄郎」は、「機械の体をタダでくれる星がある」という話を、最初から最後まで素直に信じていました。確かに15歳(TVアニメ版では10歳)の少年とはいえ、あれほど聡明な鉄郎が、なぜ最初からこの話を疑わなかったのでしょうか。
そもそも鉄郎の最終的な目的地である「惑星プロメシューム」では、機械の体をもらうどころか、「生きたネジ」に加工されて機械化母星の部品にされてしまうことが後に明かされます。つまり「タダでくれる」というのは完全に嘘だったわけで、そしてこの騙しの構造を改めて考えてみると、現代の詐欺手法と驚くほど似ていることに気づかされます。
まず考えられるのは、復讐心が鉄郎の判断力を鈍らせていたという点でしょう。母親を「機械伯爵」に殺された怒りと悲しみが、冷静な思考を阻害していたのかもしれません。「同じ機械の体になれば、あいつらと対等に戦える」という発想自体、よく考えれば歪んでいるといえるでしょう。
感情的になっている時ほど、人は詐欺に引っかかりやすいものです。鉄郎の強い復讐心が、おそらくは思考停止を招いていたのではないでしょうか。
さらに「巧妙」ともいえるのが、メーテルという「案内人」の存在です。彼女は決して嘘は言いません。機械の体をくれる星が実在することも、そこに行けることも真実でした。ただし、その「実態」については最後まで明かさなかったのです。
メーテルの場合、鉄郎自身が「限りある命の美しさ」に気づくまでの「成長の時間」を与えるという目的があったとはいえ、情報を小出しにする手法は、言ってしまえば現代の悪質商法でよく見られる手口と似ています。
また、『999』の世界には深刻な情報格差が存在していたであろうことも見逃せません。富裕層の機械化人たちはタダでもらえるわけがないことを知っていたでしょうが、貧困層の人間たちには正確な情報が伝わっていませんでした。現代でいうデジタルデバイドのような状況が、宇宙規模で起きていたわけです。
鉄郎が旅の途中で出会う人々のなかには、機械化の危険性を警告する者もいます。しかし彼は最初、そうした声に耳を傾けようとしませんでした。「自分だけは大丈夫」「自分の場合は違う」という根拠のない自信は、現代のネット詐欺被害者にも共通する心理でしょう。
「車掌さん」の複雑な態度も、いま思えば重要なヒントだったかもしれません。彼は職務上、乗客を目的地まで送り届けなければなりませんが、同時に多くの人々が悲惨な末路を辿ることも知っていたはずです。そのジレンマが、時折見せる優しさや気遣いに表れていたといえるでしょう。
こうして見ると『銀河鉄道999』は、現代で言う「情報リテラシー」の重要性を、40年以上も前から描いていた先駆的な作品だったのかもしれませんね。「限りある命の美しさ」とともに、美味しい話には必ず裏があるという教訓や、感情に流されず冷静に判断することの大切さを、壮大な宇宙を舞台に教えてくれていたのでしょう。
(マグミクス編集部)
