短い歴史だった「ニンテンドウパワー」 背後にあった中古カセット問題
ローソンとの提携
また、任天堂はすでに普及し、まだパワーがあるスーパーファミコンを、流通業者があまり重視していなかった点を不満に感じていたようです。そこでコンビニの店舗数で当時2位を誇り、強力な流通網を持つローソンと手を組んで、ニンテンドウパワーを開始することになりました。特にニンテンドウパワーは書き込みサービスのため在庫がいらないという利点があったことも、ローソン側としては重要だったようです。セブン-イレブンと手を組んだデジキューブが倒産した要因のひとつに在庫問題があったことからも、在庫管理の重要性が伺えます。
当初は39タイトルから始まったニンテンドウパワーは12月にはさらに62タイトルが追加され、あっさりと100タイトルを突破します。1999年には新作となる『ファイアーエムブレム トラキア776』の書き換えが開始され、このときは筆者の友人のなかにもニンテンドウパワーを利用した人間が複数現れました。
2000年にはゲームボーイの書き換えサービスも開始され、これは子供たちの間でそこそこ利用されていたようです。とはいえニンテンドウパワーはデジキューブと比較するとあまり大々的な宣伝がなされておらず、ゲーム好きのなかでもあまり存在を認識されていなかったように思えます。結局筆者がニンテンドウパワーを利用したのは『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』だけで、そのときの店員さんが、明らかに慣れていない手つきでおっかなびっくり機械を操作していたのをよく覚えています。あまり、利用されていたサービスではなかったのでしょう。
中古問題も2001年には高等裁判所で「中古ゲームソフトの売買は合法」と判例が下され、最高裁がゲームメーカーの上告を棄却したことにより決着がつきます。
こうしてニンテンドウパワーは2002年8月31日にローソンでのサービスを終了。2007年には任天堂での書き換えサービスも終了し、その役割を終えました。
配信がメインとなった今では、書き換えサービスが生まれることはおそらくありません。筆者は「ソフトベンダーTAKERU」「ディスクシステム」などの終焉を見届けてきましたが、おそらくニンテンドウパワーが最後のひとつでしょう。もう、お店のなかで書き換えを待つ間のワクワクした時間を感じることはないのが、少しだけ寂しく思えるのです。
(早川清一朗)