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劇場版『はいからさん』がBS放映。女性が輝き始めた「大正」時代、『鬼滅』との共通点も

恋も仕事もどちらも大事、紅緒のまっすぐな生き方

原作マンガ『はいからさんが通る』新装版第1巻(講談社)
原作マンガ『はいからさんが通る』新装版第1巻(講談社)

「元始、女性は太陽であった」

 明治末期から婦人運動を進めた平塚らいてうの言葉です。『はいからさんが通る』の時代設定となっている「大正」は、大正デモクラシーと呼ばれる大衆運動が広まり、女性解放運動も高まった時代でした。平塚らいてうの言葉そのままに、紅緒は太陽のように明るく輝き、古い伝統やしきたりに囚われていた伊集院家の閉鎖的なムードを一掃していきます。

 忍がシベリア出兵で伊集院邸を空けている間、紅緒は「職業婦人」となり、出版社で働き始めます。家運が傾きかけている伊集院家を、紅緒は自分が働くことで経済的に支えようと考えたのです。紅緒の記者としての初仕事は、米騒動の取材でした。米騒動は、お米を買い占めて暴利を貪っている悪徳商人たちに、ごく普通の主婦たちが中心となって怒りを爆発させた抗議活動でした。社会全体に、女性ムーブメントが広がっていた時代だったのです。

 初恋の相手である忍とのロマンスを、紅緒は成就させることができるのか? そんな少女マンガの王道ストーリーを描きつつ、『はいからさんが通る』は日本でジェンダー思想が高まっていた時代の雰囲気をうまく取り入れています。後編ではシベリア出兵から帰ってこない忍の手がかりを得るために、紅緒は満洲で暴れ回る馬賊を取材に行くという大胆な行動力も見せることになります。

 恋も大事、仕事も大事、そして何よりも紅緒は、自分らしくまっすぐに生きようとします。大正時代を生きた紅緒ですが、現代に生きる私たちもシンパシーを感じる魅力的なキャラクターとなっています。

紅緒は、禰豆子と同世代?

 令和を代表する社会現象となっている『鬼滅の刃』も、大正という時代設定の物語です。『はいからさんが通る』は大正七年(1918年)から始まり、大正十二年(1923年)に起きた関東大震災がクライマックスとなります。『鬼滅の刃』は明治から大正に元号が変わってしばらく経った頃の物語です。大正七年に17歳だった紅緒は、『鬼滅の刃』の竈門炭治郎の妹・禰豆子とほぼ同世代だと言えそうです。

 もちろん、伝奇ファンタジーである『鬼滅の刃』と恋愛コメディ『はいからさんが通る』はまったくスタイルの異なる作品ですが、女性たちがとても強いことで共通しています。普段は兄・炭治郎の背負う木箱のなかで眠っている禰豆子は、炭治郎に危機が迫ると眠れるパワーを発揮します。また、炭治郎が入隊している「鬼殺隊」は実力重視の合理的な組織であり、「蟲柱」胡蝶しのぶ、「恋柱」甘露寺蜜璃ら女性隊士が大いに活躍します。

 女性たちが太陽のように、まぶしく輝き出した時代。それが「大正」という時代だったのではないでしょうか。

(長野辰次)

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