『鬼滅の刃』で注目すべき、子供たちとの関係と「あの少年ジャンプ」【この業界の片隅で】
今の時代だからこそ輝く「あの少年ジャンプ」の志
思い出されるのは、「あの少年ジャンプ」のことです。2011年の東日本大震災発生直後、東北地方では生活物資はもちろん娯楽関係の流通も完全にストップし、避難所の子供たちは携帯電話もろくに使えぬまま、テレビで流れる被災の様子を延々と見続けさせられるという苦境に追いやられていました。
そんななか、仙台の小さな書店が、県外から訪れた人から1冊の「週刊少年ジャンプ」の最新号を譲り受けます。その2011年3月19日発売の16号は、無償で貸し出されるやボロボロになるまで回し読みされ、困難に立ち向かう子供をマンガの力で大いに勇気づけたのでした。
「あの少年ジャンプ」は、2012年4月12日に発表された第16回手塚治虫文化賞で特別賞を受賞。マンガの作り手としての志を象徴するものとして、発行元である集英社に今も大切に保管されているそうです。「俺たちはこういうふうに読まれるものを作っている、そして、こういうふうに読まれるものこそ作るべきなのだ」と。
この志が原作にあったからこそ、『鬼滅の刃』のアニメはここまでヒットしたのかもしれません。
アニメ視聴のためのファーストウインドウ(最初に使うツール)がテレビであろうがネットであろうが、作品人気の広がっていく本質的な要因は、近しい人同士の口コミであることに変わりはありません。そして、子供たちの間ですら、アニメ視聴のファーストウインドウがテレビからネットに移行した現状を、ポジティブにとらえることだって可能です
テレビ放送枠や放送期間の長短やオモチャ展開の有無に関わらず、志が高く面白い作品であれば、どんなものであっても子供たちの人気も集められる時代になったのです。テレビシリーズの製作や今回の劇場版の共同配給として参加しているアニプレックスが、早い段階から『鬼滅の刃』の原作に目をつけていたのは、「少年ジャンプ作品らしい面白さと、それにとどまらない人間ドラマに惹かれたから」という話もあります。
マーケティングを駆使したヒット要因の分析や、ビジネススキームのトレースは、もちろん重要です。しかし、業界の片隅にいる私のような人間や、檜舞台で活躍されている方も含め、ものづくりに携わる人間が真に見習わなければならないのは、数字を追いかけるあまり見失いがちになってしまう、「作品の面白さ」そのものを追求する情熱なのかもしれません。
そして『鬼滅の刃』をメガヒットに導いた情熱の根源には、やはり「あの少年ジャンプ」があるように思うのです。
(おふとん犬)
