マンガの絶対的悪キャラの「良いところ」6選。鬼舞辻無惨にもあった…?
少年マンガでのなかで、主人公の前に立ちはだかる悪の強敵たち……彼らはだいたい、自分の都合で世界を支配しようとしたり、秩序を乱したりとやりたい放題です。ただ、そんな彼らにも、見方を変えれば「良いところ」があるかも知れません。絶対的悪キャラ6人の「良いところ」を探ります。
「パワハラ」鬼舞辻無惨の紳士的な側面…?

少年マンガ史にその名を刻む絶対的悪キャラたち。傍若無人、横行跋扈、悪逆無道とやりたい放題の彼らですが……今回は視点を変えて、そんな彼らの「良いところ」に注目したいと思います。絶対的悪キャラ6人の「良いところ」について、ご紹介します。
●いま一番旬の悪キャラ・鬼舞辻無惨
いま子供たちの間で一番の悪キャラといえば『鬼滅の刃』の大ボス・鬼舞辻無惨でしょう。自分の血で人間を鬼に変える能力を持つ彼は、主人公・竈門炭治郎の家族を殺し、さかのぼれば平安時代から多くの人を殺してきました。さらには、自分の部下が口答えをすれば殺し、無茶な命令を出しておきながらそれができなければ殺し、心のなかで言い訳をした者をも殺すという傍若無人ぶり。最強のパワハラ上司とも呼ばれています。そんな彼にも「良いところ」が……ひとつだけありました。
それが、第2巻での酔っ払いとのエピソード。炭治郎を撒いて逃げた無惨は人気のない路地を歩くのですが、そのとき酔っ払った3人組に遭遇。そのなかで千鳥足で歩いていた1人に肩をぶつけられてしまいます。酔っ払いは謝りもしないどころか「何だてめえ!」と逆ギレしてくる始末。ココだけを見れば悪いのは完全に酔っ払いの方です。
これには無惨も怒って当然なのですが、何と彼は、とても紳士的に自分から「すみません」と謝罪。さらに突っかかられても「申し訳ありませんが急いでおりますので」とあくまで冷静な対応。自分は悪くないのに波風を立てないように振る舞う。なかなかできることではありません。
たとえ彼がこのあと3人組をワンパンで殺すぐらいぶちキレてしまうとはいえ、意外と紳士的な一面を持ちあわせた人物と言えるのではないでしょうか。
●悪魔界の萌えキャラ・リューク
続いては『DEATH NOTE』に登場する死神・リュークです。青白い顔に大きな口と目、背中からは大きな黒い羽と、恐ろしい見た目は死神そのもの。しかも、自分が退屈だからという理由で、人間界にわざとデスノートを落とし、どうなるか観察するという性格も死神らしいといえます。
そんな彼の良いところ……それは、大好物のリンゴがあればだいたい言うことを聞いてくれるところでしょう。しかも、リンゴをしばらく食べないと体がねじれるという可愛い禁断症状まであります。死神とリンゴ……少し神秘的な響きがする悪魔界の萌えキャラです。
「宇宙の帝王」も実は紳士?
●育ちの良さが光る、宇宙の帝王・フリーザ様
マンガ史に残る絶対的悪キャラ、続いては『ドラゴンボール』のフリーザです。圧倒的な戦闘力で数々の星を破壊してきた経歴はまさに宇宙の帝王。そんな彼の良いところ……まずは言葉遣いです。
フリーザ様は基本的に「ですます調」の丁寧語で話します。そのため会話の内容がとても野蛮なことであっても、ややマイルドに聞こえます。やはり宇宙の帝王というだけあって、育ちの良さがうかがえます。さらに『ドラゴンボール超』では、戦闘力を上げるため人生で初めて努力したことも告白。天才でありながらも向上心は忘れない、見習うべきところが多い悪キャラです。
●愛で変わった虫の王・メルエム
続いては『HUNTER×HUNTER』で登場するキメラアントの王・メルエムです。圧倒的な強さを持ち、人間を支配することしか考えてなかった彼ですが、コムギという少女との出会いで心が変化します。ネテロとの戦いでは自分が圧倒的有利な状況のなか、話し合いをしようと提案するなど、人間より人間的な一面を見せてくれました。
●史上最強のパワハラ上司・兵藤和尊
続いては『賭博黙示録カイジ』で登場する「帝愛グループ」の総帥・兵藤和尊です。主人公・カイジの天敵である兵藤は、鬼舞辻無惨にも匹敵する超パワハラ人間。勝負に負けた部下を「制裁」と称して熱々の鉄板の上で土下座させたり、地下の強制労働場へ送り込んだりと、まさに人の皮を被った鬼です。
ただ、経営能力とギャンブルの才能は凄まじく、日本屈指の「帝愛グループ」を作り上げただけのことはあります。しかも、ギャンブルに対してはフェアプレー精神を持っており、カイジと直接勝負したときも勝つチャンスを相手に与えていました。
●悪キャラ界イチのオシャレ・ジン
最後は『名探偵コナン』で登場する黒の組織の男・ジンです。目的のためなら人殺しも平気でやってのけるコナンの宿敵です。工藤新一が薬のせいで体が縮んでしまうキッカケともなったのも彼です。
ただ、怪しい薬を新一に飲ませたあと、ろくに確認もせずに立ち去ったおかげで、新一はコナンとして生き延びられたことを考えれば、意外とドジっ子な一面もある気がします。また、あの黒ずくめの格好で街なかにスムーズに溶け込める技術は、よほどのオシャレでないとできない芸当です。
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絶対的悪キャラにも、どこか光る良さがある……そうした二面性が、悪キャラでありながら読者を惹きつける魅力といえるでしょう。気になる悪キャラの「良いところ」を探しながらマンガを読み返す、という楽しみ方もできるかも知れませんね。
(吉原あさお)