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『シン・エヴァ』制作に密着した「庵野秀明スペシャル」が再放送。仕事観、父の存在語る

庵野監督の口から語られた「父親」にまつわる記憶

「プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル」紹介ページ (C)NHK
「プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル」紹介ページ (C)NHK

 今回の密着ドキュメントでいちばんの見どころとなったのは、番組後半の山口県宇部市を訪ねるパートではないでしょうか。『シン・エヴァ』のラストシーンに登場する宇部市は、庵野監督の生まれ故郷です。庵野監督のかわいらしい幼少期の写真とともに、庵野監督の家族について言及されます。BS1スペシャル『さよなら全てのエヴァンゲリオン』では、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーからの示唆で、NHK取材班は宇部市に向かったことが触れられていました。

「いつも何かが欠けていた」。庵野監督は宇部市で過ごした幼少期、家族と一緒に遠出した思い出がないそうです。それには父・卓哉さんが大きく関わっていました。卓哉さんは事故に巻き込まれ、左足を失ったそうです。そのため、家族で遠出したことがなく、庵野監督には世間を憎んでいた卓哉さんの記憶が残ることになったのです。

 やがて少年時代の庵野監督はTVに夢中になり、元祖巨大ロボットアニメ『鉄人28号』(フジテレビ系)にハマります。鉄人28号の腕などが壊れて取れてしまった状態に、庵野監督は魅力を感じたそうです。庵野監督が生み出した「エヴァ」の登場キャラクターたちは見た目は普通でも、心のどこかが欠落しています。欠けているからこそ、代わりのものを求めて懸命に補おうとする。庵野作品の原風景が、「人類補完計画」の原点が、少年時代の宇部市にあったことが明かされていきます。

「親を肯定したかった」とも庵野監督は語っています。このエピソードを知って、もう一度『シン・エヴァ』を見直すと、「人類補完計画」を完遂しようとする碇ゲンドウと、それに抗うシンジとの父子のやりとりもまた違ったものに感じられるのではないでしょうか。

初放送後には、視聴者から賛否の声が……

 4月11日に新宿バルト9で行なわれた「『シン・エヴァンゲリオン』 大ヒット御礼舞台挨拶」で、庵野監督は同番組について「僕は観てない。僕が映っているものは観ない」「(取材カメラは)いいところに来てない。もっといいシーンがあったのに」と笑いながら語っています。とはいえ、TVのドキュメンタリー番組で、ひとりの人物を4年にわたって密着取材するのは非常に稀なことです。庵野監督の創作におけるストイックさは、充分に伝わったのではないでしょうか。

 3月22日の初放送後は、庵野監督や『シン・エヴァ』に全力を注いだスタッフ&キャストへの称賛の声が多かったものの、制作スケジュールをひっくり返すような庵野監督の仕事ぶりに否定的な感想もネット上にはありました。

 庵野監督の「作品至上主義」という考え方には、ついていけないと感じた人もいるかもしれません。ブラックな職場になりかねない危険性もあります。でも、庵野監督と仕事をすることで、スタッフやキャストは自分が思っている以上の能力を発揮していくという一面もあるように感じました。それが庵野監督ならではの、仕事の流儀でもあるようです。

 不可能かと思えた「エヴァ」シリーズの完結を見事にやり遂げた庵野監督ですが、企画・脚本・製作を手掛けた『シン・ウルトラマン』の劇場公開、『シン・仮面ライダー』の制作などのリメイク企画が控えています。『風の谷のナウシカ』(1984年)の続編の行方も気になるところです。自分が本当に面白いと感じるものを愚直に追い求める庵野監督が、オーバーワークで体を壊さないことを願うばかりです。

(長野辰次)

【画像】これからも楽しみすぎる!庵野監督が手掛ける実写映像作品(6枚)

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