『シン・エヴァ』制作に密着した「庵野秀明スペシャル」が再放送。仕事観、父の存在語る
大ヒット公開中の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』制作の裏側を追ったのが、NHKドキュメンタリー『プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』です。25年ごしで「エヴァ」シリーズを完結させた庵野秀明監督の仕事ぶり、これまで明かされなかった幼少期を知ることができる貴重な番組となっています。
『シン・エヴァ』制作内情を追った密着ドキュメント

「この男に安易に手を出すべきではなかった」
そんなナレーションで始まったNHK番組『プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』が、2021年5月1日(土)の夜11時50分から深夜1時5分まで再放送されます。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が興収80億円を突破する大ヒットとなっている庵野秀明監督に、番組史上最長となる4年間にわたってNHKが密着取材したドキュメンタリー番組です。
3月22日に初放送された『庵野秀明スペシャル』は反響が大きく、4月29日にロングバージョン『さよなら全てのエヴァンゲリオン 庵野秀明の1214日』がNHK BS1で放映されたのに続き、『庵野秀明スペシャル』もNHK総合でアンコール放映されることになりました。
1995年にTV放送が始まったSFアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』 (テレビ東京系)から、シリーズ完結編となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の完成に至るまでの庵野監督の足跡を追っており、すでに『シン・エヴァ』を観た人も、まだ観てない人も、楽しめる内容となっています。再放送を前に、同番組の見どころを振り返ります。
※本記事では、映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』内容に触れる箇所があります。
大きな支えとなった安野モヨコさんの存在
視聴者がまず目撃するのは、庵野監督が『シン・エヴァ』に関わるスタッフだけでなく、自分自身も徹底的に追い詰めていく姿です。社会現象と呼ばれるほどの大ヒットシリーズとなった「エヴァ」ですが、カメラに映る庵野監督は成功者としての余裕や自信をまるで感じさせません。スタッフだけでなく、NHKの取材クルーにも落ち着いた口調で取材のやり方に容赦なくダメ出しします。
庵野監督は自分が面白いと感じられないものは、いっさい認めません。公開までのスケジュールが迫っていても、凡庸なコンテや脚本はあっさり棄てて、ゼロからやり直そうとします。
「作品至上主義」。自分の命と作品を天秤にかけるのなら、作品のほうが重くなる、と庵野監督は言い切ります。アニメスタジオ経営者となり、60歳を迎えた庵野監督ですが、瞳の奥には静かな狂気が今も宿っています。
2002年に庵野監督と結婚した、漫画家の安野モヨコさんが登場し、庵野監督と出会った当時を振り返ります。「仕事ばっかりで、この人 死ぬんじゃないかと思った」そうです。肉や魚は食べないという庵野監督の偏食エピソードに加え、「庵野をどうやれば殺せるか」というネット上のスレッドを見た庵野監督は2度自殺することを考えた……というシリアスな逸話も紹介されました。庵野監督と同じように、創作を仕事としている安野さんという良き理解者が大きな支えになっていることが分かります。
現在も公開中の『シン・エヴァ』では、主人公である碇シンジや綾波レイのそっくりさんが第三村で過ごす日常生活が、非常に丁寧に描かれていました。時代の最先端を行くクリエイターにとっても、日常生活の過ごし方はとても大切であるようです。