アニメ『スーパーカブ』主人公・小熊の1年を振り返る。原作で内面描写はより深まる?
原作小説を読んで内面描写を補完すると…?

こうした小熊への違和感の原因として考えられるのは、内面描写の少なさです。そもそも小熊は口数が少なく、さらに本作ではモノローグも少なめ。礼子視点の話となる第5話でのモノローグ数と比べるととてもわかりやすいでしょう。
また小説原作の作品ではよくありますが、台詞以外の“地の文”で表現されていることを削っているのも一因といえます。メディアの違いに起因することのため仕方ないですが、先述したモノローグの少なさも相まって、本作ではかなり印象が変わっています。
わかりやすいところでは、第11話で川に落ちて動けなくなった椎からの電話を受け、小熊がスーパーカブで助けに行くシーンが挙げられます。
アニメでは救助された椎に「警察とか救急車は?」と問われて小熊は「呼んでない」と答えるだけ。しかし原作小説では救助に向かう前に、椎の被害の深刻度を推測し、おそらく10分ほどで助けに来るであろう警察や救急に連絡する時間と自分がすぐに助けに向かうことを天秤にかけ、その上でスーパーカブに乗っている矜持を踏まえて「スーパーカブが必ず助けに行く」と電話口で椎に伝えます。
もちろん作品の優劣の話ではなく、それぞれのメディアで何を表現するかという取捨選択の話ではありますが、原作小説とアニメのどちらも知っていると、いっそう小熊や『スーパーカブ』という作品の魅力が感じられるはずです。原作小説はもちろん、元々連載されている小説投稿サイト「カクヨム」では無料で読むこともできるため、気になる描写がある方はチェックしてみましょう。
また、そもそもアニメ『スーパーカブ』の序盤の小熊を振り返ってみると、第1話からヘルメットと革手袋をタダでくれたバイク屋の店員に「これは何人殺してるんですか?」と物騒なジョーク(?)を飛ばし、第2話ではクラスメイトの礼子との約束を放り出して帰宅しようとします。つまり小熊はずっと素朴な少女ではなく、いわゆるちょっと“黒い”部分も持った普通の女の子なのです(ちなみに原作ではより過激な内面描写も……)。
ともあれ、そんな小熊が1年という月日を経て、相変わらず両親もお金も将来の目標もありませんが、友達や趣味ができたのは事実。小熊という普通の女の子がそれを成し遂げたことは、美しい背景美術やこだわりの音響などとともに本作のリアリティを増幅し、なおさら感動的ですらあります。
アニメ『スーパーカブ』を見終えた方も、ぜひ小熊というキャラクターをとらえ直した状態で、また原作を読んで彼女の心情をより深く知ったうえで、改めて見返してみると楽しいかもしれません。
(はるのおと)
(C)Tone Koken,hiro / ベアモータース
※アニメ『スーパーカブ』は、配信サービス「GYAO!」にて6月29日(火)まで1話~11話が配信中。「ニコニコ」でも6月29日に一挙配信が予定されています。その他、アニメストア、Amazonプライムビデオなど各有料配信サービスでも視聴可能です。








