『呪術廻戦』虎杖悠仁が“優しすぎる”シーン3選 恋愛シーンが「罪」!?
劇場版公開を控えている『呪術廻戦』ですが、日に日に主人公・虎杖悠仁の常軌を逸した優しさに注目が集まっています。超人的な身体能力の持ち主である彼は優しさもまた超人的だったようです。
イノセントすぎて人を自己嫌悪に追い込む…虎杖は「罪」な男か?
『呪術廻戦』(著:芥見下々)。シリーズ累計発行部数5000万部を突破し、2021年12月24日には『劇場版 呪術廻戦 0』が公開予定と、ますます注目は高まっています。さてそんな『呪術廻戦』の主人公・虎杖悠仁は曲者ぞろいの『呪術』のなかでも屈指の「良いやつ」としてたびたびその言動に注目が集まっています。生死を賭けたバトルファンタジー作品ゆえに陰惨な描写も多い本作ではありますが、それゆえに虎杖の人間に対する誠実さは際立ちます。ということで本稿では下手すれば「週刊少年ジャンプ」の主人公のなかでも相当な人徳の持ち主である虎杖の「優しすぎる言動」をご紹介。なかにはさりげなさすぎて気づかなかった……なんてこともあるかもしれません。
※この記事では、まだアニメ化されていないシーンの記載があります。
●初対面でも…「嫌いな奴にいつまでも家の前にいてほしくねーだろ」
一見、破天荒にしてノンデリカシーのように思える虎杖ですが、実際のところ人の心の機微に対しては達人の域。吉野順平との蜜月においては「オタクに優しいギャル」っぷりを遺憾なく発揮します。ことファーストコンタクトにおいてそれは顕著です。生徒の心に無頓着な教師に対する順平の強い嫌悪感をいち早く察知した彼は、自分を悪にしたてることで安全圏へと順平へと連れ出し「嫌いな奴にいつまでも家の前にいてほしくねーだろ」と述べます。……ずっと誰かに言って欲しかったであろうセリフをさらりと言ってのけてしまうのが虎杖の徳です。順平の心に付け入るのが真人であれば、つながろうとしたのが虎杖でした。彼が人を助ける理由は「そうあるべきだから」という良心(祖父の遺言)にしたがっているからであり、カント的理想を課しているのです。
●殺されそうになった相手でも「ごめん」 九相図兄弟戦
虎杖の優しさは呪霊にも向けられます。九相図兄弟戦において弟・血塗(けちず)の死を知った呪霊・壊相(えそう)の眼からあふれる涙を見て、虎杖は攻撃の手を休めてしまうのです。意図的な行動ではなく反射に近いものですが、分け隔てない虎杖の高い共感性を示す象徴的なシーンでした。また壊相にトドメを刺す際の「ごめん」という呟き、これも往々にして「その甘さが命取り」と一喝され得る場面ですが呵責し続けることを選んだ彼を一体誰が責めることができましょうか。こうした利他主義による重圧を受け止めるためにも最初から非現実的な肉体が彼には用意されている、と言えるかもしれません。
●同級生・小沢優子との再会シーンは…優しすぎたのか?
虎杖の優しさを最も肌で感じることができるのが中学の同級生・小沢優子との再会シーンでしょう。容姿に自信がなかった小沢は、自分の内面の美しさに気付いてくれた虎杖に心を寄せていました。さて彼女は中学卒業後、すっかり垢抜けた容姿に。そんな小沢と久々の再会を果たした虎杖は以前と変わらぬリアクションで応じます。この態度に同席した釘崎野薔薇も満点を出すのですが、当の小沢優子はどこか浮かぬ顔。本来、容姿にこだわらない彼が好きだったはずなのに、どこか見違えた自分への評価を期待してしまった……虎杖のイノセンスがかえって彼女を自己嫌悪に陥らせてしまうというかなり純度の高い恋愛ドラマが展開されました。なお同エピソードにおいて虎杖は釘崎の呼び出しに対し、ある場所から換金所に寄らずに馳せ参じるなど行間に優しさを散りばめた、道徳や現代国語の教科書に採用されてもおかしくない回です。
『呪術』の登場人物の多くはままならぬ現実に対してニヒルな諦念を抱いています。「陰キャ」「陽キャ」はあながち比喩でなく、互いが互いの存在を保証する陰陽図を描いており、『呪術』の物語は虎杖の優しさによって廻っているのです。
(片野)