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『鬼滅』『ワンピ』『ジョジョ』作者の華麗すぎる「言い訳」。読者への返しが神対応!

「言い訳」は社会的にさほど推奨されていませんが、人気漫画家ともなるとその「言い訳」が伝説になることもあるようです。「少年ジャンプ」の人気漫画家たちの「華麗なる言い訳」を紹介します。

一流マンガ家は「言い訳」もまた超一流

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 人気マンガともなると、「言い訳」もまた実に素敵です。

 編集部の催促に対する言い訳ひとつとっても作家の個性が出るもの。では、「読者」から作品への「ツッコミ」に対してはどうでしょうか? これが、非常に素晴らしいものばかりなのです。今回は「週刊少年ジャンプ」連載作品に対する読者からのツッコミと、それに対する天才漫画家たちの華麗なる言い訳をご紹介します。

●「ツェペリさんは独身だったはず」総ツッコミを受けた荒木先生の言い訳

「声に出して読みたい言い訳」として後世に語り継ぎたいのが、『ジョジョの奇妙な冒険』に寄せられたツッコミに対する、作者・荒木飛呂彦先生の「言い訳」です。

『ジョジョ』の第1部に波紋の呼吸法の師として登場したツェペリさん。彼は生涯独身という設定だったはずでしたが、第2部にはそのツェペリさんの孫であるシーザーが登場。果たしてこれはいかがなものかというツッコミが殺到しました。

 これに対して荒木先生は「『大人はウソつきだと思った少年少女のみなさん、どうもすみませんでした。大人はウソつきではないのです。まちがいをするだけなのです……。』という美しい言い訳を残しました。なんと真摯な言葉でしょうか。

●ミスはミス!でもギャグで押し通してこその「尾田っち」

『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生もまた類い稀な「言い訳力」の持ち主であります。緻密な伏線が張り巡らされていることで知られる同作ですが、それでもなかには「ミス」としか思えない描写が紛れ込んでしまうこともあるようです。

 そんな時、単行本の質問コーナーには読者からの容赦ないツッコミが届くのが通例です。今回ご紹介するのは、水に沈むはずの悪魔の実の能力者「Mr.3」(ミスタースリー)が水に浮かんでいる描写を発見した読者からのツッコミに対する、尾田先生からの回答(言い訳?)。

「(前略)みんな甘いなァ…。ちゃんと理由があるんですよ。アレはなんと偶然にもMr.3の体の下に”ものっすごく浮く木片”があったんですね。(隣に木片のイラスト)」

 なんでもお相撲さんの浮力が通常5プカーに対し、その木片の浮力は13プカーを記録していたとかいないとか……ツッコんだ方が野暮のように思える仕上がりです。しかし尾田先生のことですから、この「ものすごく浮く木片」が実は伏線だったりする可能性も捨て切れません。それを含めて二重にも三重にも素敵な言い訳でございました。

●栗花落カナヲのキュロットが短くなっているのを「縫製係のしわざ」にした発想力

『鬼滅の刃』(著:吾峠呼世晴)にも華麗なる言い訳は存在しています。敏感な読者はお気付きの通り、栗花落カナヲのキュロットはなぜか物語が進むごとに短くなっていきます。

 とはいえ、キャラクターデザインの細部が変化してしまうことはよくある話でもあります。しかしこれへのツッコミに対する吾峠先生の言い訳は実に華麗なものでした。

 別枠に設けたイラストで、隊服の縫製係である前田まさお氏が自分の趣味でやったかのように演出したのです。この縫製係の前田は、もともとあだ名が「ゲスメガネ」という設定であり、無理なく作中人物のしわざにしてしまうテクニック、脱帽です。(意図的に短くしていたのであれば、なおさらゲスメガネ前田という脇役の立て方がお見事です)。

『ジョジョの奇妙な冒険』『ONE PIECE』『鬼滅の刃』……「少年ジャンプ」を代表する人気マンガの作者たちは、言い訳もまたトリッキーであり、テクニカルであり、そして何より読者に対する「誠意」のあるものでした。

 連載が長くなれば、どうしても初期設定との齟齬(そご)が起きるもの。きっとそれは仕方のないことです。だからこそ、その矛盾とどう向き合うのか。これもまた漫画家たちの腕の見せどころなのかもしれません。

(片野)