『こち亀』で中川がマトモになったのは何巻から? 鯉にマシンガンをぶっ放す男が…
『こち亀』のメインキャラの中川は「昔は過激だった」と、よく聞きます。果たしてその「昔」はいつまでなのか? 中川がまともになった瞬間を振り返ります。
マトモになってからも時々見られる「壊れた中川」

今なお週刊連載が続いている気がしてならない『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(著:秋本治)ですが、そんな『こち亀』に関して次のような話をよく聞きます。
「昔の中川はやばかった」
「初期の中川は普通に銃を乱射していた」
ここでいう中川とは無論、両さんこと両津勘吉の後輩中川圭一のこと。イケメンで頭脳明晰、長期にわたり派出所の「良心」を背負い続けている中川ですが、初期の単行本を読んだことがある方なら「昔の中川やばかった説」は認めざるを得ないことでしょう。
では改めて「昔の中川」の「昔」とはいったい、いつまでを指すのでしょうか。長期連載になればキャラクターの性格容姿が変化するのは当然のこと。ですがその萌芽となる瞬間は必ずあるはずです。この記事では中川が「まともになった瞬間」を捕まえてやりたい、そう思っています。
さて「まともになった瞬間」といっても漠然としています。そこで今回は両さんの暴走に悪ノリせず、やめましょうと「諌める」描写がある、そして「非常識な行動を取らない」、この2点を満たしていれば「まとも」条件をクリアということにします。それでは具体的に見ていきましょう。
1巻の記念すべき第1話。のっけから中川は大暴れ。特注の制服を着込み、銃で、走行中のバンを誤乱射。女性をナンパ。両さんと一緒に賭け花札、飲酒とやりたい放題。まさに「昔の中川はやばかった」を地でいく姿に惚れ惚れします。7話でも酔っ払いにキレる両さんを諌めつつも結局、自身も発砲します。
2巻1話では両さんが釣り上げた鯉に中川がマシンガンを乱射。2話も派出所内で発砲。3話では派出所内でパーティーの予行演習。4話でまた勤務中ナンパ。5話で駐車場事故。8話で両さんと新幹線無賃乗車。非常に芸術点の高いイカレっぷりを披露しています。
3巻1話では派出所の火事に乗じた始末書隠ぺいに協力。2話では意外にも問題行動なし。ただし「諌め」もなし。3話は冒頭から警察署に車で突っ込み、両さんと喧嘩して撃ち合いに。4話は子供の野球ボールに発砲。5話は両さんに無理やり寒中水泳をさせられるが「諌める」ではなくただの拒否なのでクリアならず。
6話は手錠を火で焼き切ろうとしたり、両津に生意気な態度を示したりするも、諌める言動もあり。早くも「まとも」の兆しが見え始めます。7話では勤務中にレースゲーム。8話では機動隊訓練へ向かう車内で両さんと物を投げ合う大げんか。結果バスは事故に。1巻、2巻と比べるとすでに発砲回数は激減しているのが分かります。
4巻です。お蔵入りした中川の「バンザーイ」発言のエピソードが収録されていた巻としても有名です。現在の第1話では勤務中に麻雀をする程度。もうカワイイものです。2話ではノリノリでガールハント。3話では誰でもわかるような詐欺に両さんと引っかかり「バカ」の烙印を押されてしまいますが、問題行動は特になし。
そして、4話。子供らが派出所で犬を引き取るかどうかでひと悶着。中川は犬に乱暴しようとする両さんをひたすら制止し続けることに……今です!捕まえました!1978年2月15日発行コミックス4巻4話、「まともになった中川」、確保です。ついに「諌める」+「非常識な行動を取らない」中川が登場しました。
長期捜査が予想されましたが、意外なほど早い幕引きに驚きを禁じ得ません。確保はしましたが一応、その後の足取りもたどりましょう。4巻6話、太田裕美のコンサートの警備に行った際も中川は絶えず興奮する両さんをなだめる役回りなっています。もちろんこの後すぐの巻でも発砲したり、派出所で大騒ぎしたりと非常識な言動が目立つときもありますが、少なからず突如としてマシンガンで鯉を粉砕するような男ではなくなっていくのです。
ご存知の通り、中川はその後「まとも」の一途をたどったかといえば、違います。100巻を超えてもなお精神的に追い詰められた時などに度々暴走。両さんを「角刈り」呼ばわりしては大暴れ。まともになったからこそ、余計に暴走した時のギャップが面白いキャラへと成長していったのです。
ということで、よく目にする「昔の中川」はだいたい4巻までを指すのであろう、ということをこの記事における結論とさせていただきます。
(片野)