『機動戦士Zガンダム』は当時の子供には難しかった? 真価が分かったきっかけは…
繰り返し見ることで内容を把握できた

家庭用のビデオデッキは1980年代前半にはすでに販売されていましたが、急速に普及したのは1980年代半ばから後半にかけての時期となります。1985年にはまだビデオデッキがなかった家にも、1988年にはあった……そういう記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
『機動戦士Zガンダム』はティターンズ、エゥーゴ、アクシズの3勢力が入り乱れているだけでなく、パプティマス・シロッコ率いるジュピトリスのように、立ち位置が分かりづらい勢力も存在していました。そもそもティターンズとエゥーゴ自体も地球連邦軍の内部組織であり、だれが何のために戦っているのか、子供には見えづらい部分がありました。
この問題を解決してくれたのがビデオデッキでした。本放送で一度見ただけでは理解できない部分も繰り返し見ることで、内容を把握できるようになったのです。再放送とビデオデッキの普及時期がちょうどマッチしたことが、『Zガンダム』の人気を飛躍的に高めたのではないでしょうか。
ただ、このときの再放送のオープニングは全編を通して森口博子さんが歌う後期OP「水の星へ愛を込めて」が使用されており、最後の方が少しカットされていました。鮎川麻弥さんの前期OP「Z 刻をこえて」を実際に目にするまでにはさらに数年がかかりましたが、これは仕方のないことでしょう。
かつて富野由悠季監督はNHKの「トップランナー」に出演した際に、「『Zガンダム』は他のロボット作品の売り上げが芳しくなかったために経営陣が打ち出した、ファンの心を無視した作品であり、嫌だとは思ったけれどもやるしかないと覚悟を決めた」と語っています。
この時期のファンの声として有名な逸話としては、主人公であるカミーユ・ビダン役の飛田展男さんがオーディションの際に「あんな良い終わり方をしたのになんで続編なんか作る必要があるんですか」と語ったことが挙げられるでしょう。
作り手もファンも望んでいなかった続編ではありましたが、富野監督は「Z」の文字をタイトルにつけるときに、「これでガンダムは終わらない」と予感したと語っており、事実2022年の現在、「ガンダム」は世界中で評価されるコンテンツとなっており、なかでも『Zガンダム』は極めて高い評価を得た作品となっています。
ガンダム世界の原点は初代『機動戦士ガンダム』ではありますが、「ガンダムの世界には派生があってもいいのだ」という概念を産み出し、世界そのものを大きく押し広げる原動力となったのは、おそらく『Zガンダム』なのでしょう。そうした意味で、『Zガンダム』は「第二の原点」と言えるのかもしれません。
(早川清一朗)