不遇だった『仮面ライダーZX』 ファンは「がっかり」、16年後に華麗なる復活劇
『仮面ライダーZX』(ゼクロス)をご存知でしょうか? 一時期は「知る人ぞ知る」マイナーな仮面ライダーでしたが、あるマンガ作品をきっかけに、多くの人が知ることになり「大復活を遂げたライダー」です。
幻影を操る忍者ライダーが、本当に「幻」になってしまったワケ

●昭和ライダー10号、「ライダー冬の時代」に誕生!
多くの人に愛される「仮面ライダー」。世代によって、思い入れのあるライダーはそれぞれ異なるでしょうが、そのなかでも知名度の低かった「不遇のライダー」がいます。その名も『仮面ライダーZX』(ゼクロス)。
知名度が低かったのは、シリーズのTV放送がなかったいわゆる「ライダー冬の時代」に、雑誌記事やステージショーなどをメインに展開され、TVシリーズとしては放送されなかったためです。
TV放送が安定して継続している平成・令和の仮面ライダーと違い、昭和の仮面ライダーは何度もシリーズが中断し、下手をすればそこで「仮面ライダー」シリーズそのものが終わってしまう可能性もあったのです。
●今度のライダーはパンチパーマ!?
そんな狭間の時期に生まれた仮面ライダーZXは、『仮面ライダースーパー1』のTV放送終了後の1982年に登場した「10番目の仮面ライダー」です。タイトル(=ライダー名)は1982年8月に一般公募で選ばれたZX(ゼットエックス)をもとに、石ノ森章太郎先生によって「ゼクロス」と名付けられました。
当時、雑誌でZXを見た少年たちにとって、その赤いライダーのビジュアルは鮮烈でしたし、幻で敵の目をくらます「忍者」のような能力もあわさって、カッコいいと思えたものです。さらに、度肝を抜いたのが、その「ZX」に変身する主人公・村雨良(むらさめ・りょう)の髪型です。演歌歌手、あるいはチンピラのような、とても正義のヒーローとは思えないチリチリの「パンチパーマ」だったのです。でも、そのおっさんぽい髪型さえも何か謎をはらんでいるようで頼もしく思えたものでした。
●「超面白そう!」待ち続けたTV放送……しかし!
当時の子供たちは、ZXの活躍を「テレビマガジン」「たのしい幼稚園」、「テレビランド」、「冒険王」などの雑誌で見て、「これ絶対面白いやつ! 早くTV始まらないかな」と期待します。しかし、そうした願いは叶えられず、時が過ぎ去っていく……。そして、1年半。待ちくたびれたファンにようやく「テレビ化」の一報が!
歓喜した当時の子供たちでしたが、詳細を知って、拍子抜けしてしまいます。連続TVシリーズではなく、お正月特番だったのです(1984年1月3日放送『10号誕生! 仮面ライダー全員集合!!』)。
当時、筆者もえらく落胆したものですが、今なら別のことが見えてきます。「仮面ライダー」シリーズ自体が終了になる可能性があった冬の時代、長期シリーズのスポンサーがつかないなか、新ライダーを望むファンの声が石ノ森章太郎先生に届いて生まれたのが『ZX』なわけです。低予算でできる雑誌やライブショーなどで展開して認知度を上げつつ、ようやく結実したのが『ZX』TV特番であり、それが「未来」のライダーにつながったのです。